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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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(56) 紫陽花や白とは云えど移る色 7/7





「ナルミ!止め…ッ!」
エレオノールが叫ぶ。
でも、もう、止める気なんてない。
エレオノールがこれ以上何を口にしても無駄になるように。
自分の良心を遠くへ置き去りにするために。
鳴海は後ろから、エレオノールを一気に貫いた。
「あああっ!」
悲鳴とも嬌声ともつかない女の声が響いた。


鳴海は、余りの気持ちよさに声にならない。
ずぷり、と鳴海の肉欲を呑みこんだエレオノールの蜜壺は、柔らかくて温かくて、たっぷりと湿っていて、彼女の襞のひとつひとつを知覚できるくらいに、きゅうう、と鳴海を締め上げてくる。
エレオノールと繋がるその場所から、じんわりとエクスタシーが広がっていく感覚に、鳴海は鳥肌を立てた。
「す…げぇ…」
エレオノールの膣内を指で弄りながらずっと考えていた。指ですらこんなにも噛み千切られそうな締め付けならば、ペニスを挿入れたらどんなだろうか、と。挿入れたいとずっと願っていた。叶わないはずの願望が今、叶っている。
美しい紫の花を咲かせる藤や葛が、びっしりと木を覆い、その細い蔓で太い樹木をギリギリと締め殺すイメージが鳴海の脳裏に閃く。ぬるぬるした肉壁が蠢いて、鳴海を捕まえて放さない。


鳴海は腰を引くと、更に深くエレオノールの身体に押し込んだ。両手でエレオノールの腰を抱え、突き込むと同時に引き寄せて、根元まで肉幹を埋めた。
「あんッ」
鳴海の亀頭がエレオノールの子宮口を強く突き、その勢いで内臓が押し上げられ、思わず甘い声が玉突きのように飛び出した。エレオノールは改めて唇を噛み締め、握り締めたクッションで口元を押さえた。


鳴海の眼下には至上の光景。
抱きたくて犯したくて欲しくて堪らなかった女が脚を開いて四つん這いになり、蕩けた蜜口で鳴海を深々と咥え込んでいる。
突き出した尻から快感にくねる腰へと続く滑らかな曲線と、真白な肌に汗をきらめかせる背中。
悶える度に肩甲骨が影を作り、自分の物とは質を異にする、けれど柔軟でしなやかな薄い背筋がやるせない快感に引き攣れている。
エレオノールが首を打ち振る毎に短い銀色の襟足がふたつに分れて、覗くうなじも色めいて。


ずっとこうしたかった。
高校生のエレオノールと一緒の時間を過ごすようになった頃からずっと、彼女が欲しかった。
でも、彼女は鳴海の宝物だったから乱暴に扱って壊してはいけないと、触れることすら自戒していた。
欲しかった、欲しかったんだ、エレオノール。
誰よりも、リシャールより、あのストーカー男なんかよりもオレは、おまえを姦したかったんだ。
サイテイな、男だろう?


鳴海は強く激しく抽送を繰り返した。
お互いに服を身につけたまま、下着をつけたままのセックスはいささか窮屈だったけれど、脱いだり脱がしたりする手間と時間が惜しかった。
そんなことをしている間にまた、エレオノールの瞳に射抜かれてしまったら、犯すことが出来なくなってしまう。
爛れた水音が雨音よりも大きくリビングに響く。
肉茎に吸いついて離れないエレオノールの膣内の心地よさに、ともすると即座に暴発してしまいそうな射精感を鳴海は必死に堪えた。
ペニスを引き抜くとエレオノールの卑猥な口は肉色にめくれ上がり、もどかしそうについて来る。
その視覚を猛撃する淫らな絵面に、鳴海は骨盤ごと快楽に引き抜かれそうになる。


エレオノールは膣内を鳴海の硬い肉幹に掻き回されて、朦朧としていた。融けて溢れた自分の愛液が、熱く内股を幾筋も流れ落ちていく。
鳴海にゴリゴリと擦り上げられて、肉壁がひくつき、今にも絶頂を迎えそうになっている。
クッションに口元を押し付ける。意識を薄れさせ、一線を越えてしまいながらも、どこか頑迷に、声を上げてはならない、絶頂を迎えてはならないと、罪深い己に何事かを科している。


鳴海がエレオノールの項を噛んだ。
「はッ…あ…」
ジャリ、と噛み締められた銀糸が音を立てる。
鳴海が口で髪を引くと、エレオノールの上体が起こされた。
持ち上がったエレオノールの乳房を両手で掬い上げ、性器を繋げたまま、鳴海はエレオノールの背中に胸を添わせた。密着したまま腰を打ちつけると、動きに合わせてエレオノールの重たい乳房がたぷたぷと揺れた。乳房を揉みながら、尖った乳首を愛撫すると、驚くくらいにエレオノールの膣内が締まった。


「い、や…もぅ、赦し、てぇ…」
エレオノールは息も絶え絶えに、赦しを乞う。
思考が出来ない、身体の奥底が融け出して、全身が粘度を持った蜜に姿を変えてしまいそう。
「あ、は…あッ…ア…」
甘い喘ぎ声とシンクロする、カウチの軋みと粘っこい水の音。乳首を弄ばれる度に、鳴海を呑みこんだまま膣が収斂する。
口元を押さえることが叶わず、己に科していた筈の縁も立ち消えて、エレオノールの唇からは嗚咽にも似た嬌声が上がり出した。
明らかなエレオノールの変化に、鳴海の胸の中には冥い悦びと征服欲が湧き上がる。


エレオノールが自ら腰を揺らし出したことで、鳴海は彼女の更に奥深くまで蹂躙する。
何て気持ちいいカラダだろう?鳴海はこんなに具合のいい蜜穴を知らない。コレが他の男のモノになることが、そして自分よりも前にコレを楽しんだ男がいることが、それを許容したエレオノールが許せない。猛然と子宮を押し潰し、性感帯の天井を突き崩す。


エレオノールはオレのだ!
オレの、女なんだ!
誰も!誰も触るんじゃねぇよ!


腕の中で細い筋肉が震え出す。鳴海はエレオノールの身体を強く掻き抱いた。
「ふ、あ…ァ…だ、だめよ…ぃ、イク…イって、しまう…」
上りつめる。
「いけ… イっちまえ…ッ!」
そうだ、オレのでイってくれ!
「ふ…」
エレオノールの全身に力が入った。
鳴海は抽送の速度を上げる。苦しいくらいに肉幹を締められて、歯を食い縛って脳ミソを揺さぶる程の射精感に堪える。
「あ、あ、ああ…ッ…!」
エレオノールが絶頂を迎えた。
腕の中でエレオノールが脱力したと同時に、痙攣を繰り返す膣内に大量の精液を吐き出した。
「ぐ…う…」
孕んでしまえ!他の男のものになる前に!
これまでに経験したことのない絶頂感、永く溜め込んでいた鳴海の白濁した想いは簡単には止まらず、どくどくとエレオノールの中で放たれ続けた。


勢いよく射出された熱いモノが体内に満ちるのを、エレオノールは崩れ落ちながら感じた。鳴海の男根がずるりと抜け、急に虚ろになったヴァギナはひくひくと喘ぐ。
弛緩する全身を浸す満足感と絶頂感。
くったりと四肢を投げ出すエレオノールを、鳴海は荒れる呼吸をそのままに、見下ろした。勝ち鬨を上げる己の肉幹は萎えることがない。
「エレオノール…」
念願叶ってひとつになれた。彼女の頰を撫でようと手を伸ばした時、ぽろ、とエレオノールの瞳から涙が一筋、流れ落ちた。
鳴海はハッと息を呑む。突如、立ち帰って来る理性と、胸の中を席巻する罪悪感。


オレは何をした?
エレオノールにはプロポーズを受けようとする相手がいる。
そんな彼女に不貞を働かせてしまった!
でも!
そんな男がいるっておまえが、オレに、キスしたんじゃねぇかよ!


呆然と膝を突く中、エレオノールの瞳からは次々と涙がこぼれていく。
「何で…何で、泣くんだよ…」
鳴海の顔が歪んだ。エレオノールは涙に濡れた顔を鳴海から逸らし、クッションに埋めた。
「泣くくれぇなら、何で、キスなんかしたんだよ!」
鳴海はエレオノールに言葉をぶつけた。
「あれは、あのキスは、何だったんだよ?冗談、だったのか…?」
エレオノールからは返事もない。
彼女はまるでレイプされた被害者のように、鳴海の下に横たわっていた。事実その通りで、何度も「止めて」と懇願するエレオノールを無理矢理抱いた訳で、そんな彼女を更に傷つけ、責任を押し付ける自分は八つ当たりしている以外の何者でもない。


エレオノールは、キスはくれてもセックスまではする気はなかったに違いない。否、キスだって、今となっては分からない。いつもの、「おやすみ」のチークキスだったのかもしれない。彼女を欲しがる意識が限界に達していた自分が、アルコールの回った頭で勘違いをしただけの話で。
ああ、きっとそうだ。オレは勘違いでエレオノールを犯してしまったんだ。


彼女には、あの白紫陽花のように清廉でいて欲しかった。
それを、この手で手折ってしまった。


でも!
激情が止まらない。
こんなにも愛しているのに、想いがすれ違う。
こんなにも愛したのに、涙を流されて。
暴走した愛情は、愛するひとを酷く傷つけて、自分をも傷つけて。
惨めだった。
愛憎は表裏一体、自分をこんな愚か者にしたエレオノールが憎かった。
ギリギリと歯噛みをする。
「…すまん…オレが、悪かった…」
鳴海は静かにカウチを降り、床に落ちたブランケットをエレオノールに掛けた。
「…オレたちはもう会わない方がいい…。ただ今夜のことで何かあれば…オレが全部責任を取る。その時は連絡をくれ…」
引きずるような足音が遠ざかっていく。
エレオノールには、鳴海に声をかける気力さえ残されてはいなかった。


しばらくすると、遠くで玄関の扉が閉まり、錠の下りる音がした。
エレオノールの周りにまた、雨音が戻って来る。
雨はまだ、強い。
エレオノールは目蓋を下ろす。
「…もう。会わな…い…」
ごぼりと音を立てて、蜜液と混じった鳴海の精液が逆流し、エレオノールの脚の間を温かく濡らした。
今もまだ、生々しく残る情事の跡。
なのに。
エレオノールの肌からは急激に、鳴海の温もりが消えていった。



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