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義務教育を終えてない方はご遠慮ください。
Unbalance.
6.Endless night.
どこの国、どこのホテルのベッドも鳴海の大きな身体には窮屈だ。
大抵は身体をベッドの対角線に持って来れば足首から先が飛び出すだけで何とかなるものだが、時には足元にソファや椅子を持ってこないと辛いこともある。
寝返りなんてものは元より難しかったのに、今ではもう滅多に出来なくなってしまった。
何故なら、今の鳴海の睡眠には必ず、可愛い小鳥が胸に止まるから。
秋も深くなると、真夜中の室内の温度もかなり下がる。
鳴海は全身を覆うその鍛え上げられた筋肉の膨大な熱量のおかげで真冬でもあまり寒いと思うことはなかったが、それでも人肌は心地いいものだ。
例え、それが幼子のものであっても。
鳴海は自分の腕を枕にして眠る面差しをじっと見つめた。
薄っぺらいカーテン越しに差し込む月明かりに朧に浮かび上がるエレオノールの白い顔。
エレオノールの小さい拳が鳴海の着ている寝巻き代わりのシャツの胸元をぎゅっと握っている。
まるで自分が眠っている間にどこかに行ってしまわないで、そう訴えているかのようだ。
エレオノールは鳴海にくっついてでなければ眠らない。
共に旅をするようになってからずっと。
オレの腕は硬くて太くて、枕には不向きだろうに。
それでも幸せそうに眠るエレオノールに、鳴海も頬を緩ませる。
エレオノールは年が明けたら、6歳になる。
扇を広げたような形の長い睫毛が滑らかな陶器のような頬に濃い影を落とす。
しどけなく薄く開いた唇から甘い寝息が漏れる。
柔らかく長い銀糸の髪が鳴海の腕をくすぐり、丸く可愛らしい膝小僧が鳴海の腹部を掠める。
鳴海は静かに、ふう、と溜め息をついた。
ただでさえ窮屈なベッドを狭くする存在。
彼女は旅の連れ合い、誰よりも強い大男を自分が不眠にしていることを知らない。
鳴海は自分がそれほど睡眠を必要としない『しろがね』であることに感謝せざるを得ない。
可笑しな話だ。
エレオノールとふたりで旅をするようになってから、心のざわめきが顕著になった。
ようやく6歳の女の子に、どうしてこんなに心が惹かれるのか。
エレオノールを独りにしておくことはできないから、以前のように適当に女を買って性欲を処理できないからだろうか?
だから……小さくてもエレオノールは女だから……こんなに……。
いや、エレオノールは初めて会った日から、どこか違っていた、オレの中で。
初め、鳴海は自分が病気なのではないかと思った。
小さな女の子に欲情する性癖を持つ危険人物なのではないのかと、自分に慄いていた。
けれど、これまで子供は好きだったけれど別段、幼女や少女をどうこうしたいだなんて思ったこともないし、旅の道すがらすれ違う育ちきっていない女の子たちを見ても鳴海の中には何の感情も生まれてこない。
エレオノールだけが鳴海を狂わせる。
起きていても、眠っていても。その声で、その眼差しで、その手で、その存在全てで。
6歳の女の子が鳴海の身体中の血を熱くする。
鳴海の瞳の奥が妖しく光った。
もしも、彼女の枕になっている腕を巻きつけて思う様、抱き締めたら?
その細い身体に圧し掛かり、深いくちづけをしたら彼女は愛撫に応えてくれるだろうか?
もみじのように可愛らしい手に、オレのこのいきり立っているモノを握らせたら彼女はどんな顔をする?
この小さな口にコレは収まるだろうか?
いや、入らないだろう。勿論、アソコは論外で―――――。
そこまで考えて、鳴海は苦々しく唇を噛んだ。
だから、何を考えているんだ、オレは!
毎晩毎晩、オレは…!
幼女の寝顔に股間を滾らせて、本当に病気だ。
「くそ…っ」
オレは、畜生以下だ…!
エレオノールの寝顔が安らかであどけないほど、彼女を汚しているような気がして罪悪感が募る。
日々、募る想い。
悪魔に魂を売ってしまいそうで怖い。
想像する中で幼女のエレオノールを犯すからいけないのか?
ならば、成長した大人のエレオノールなら許されるのか?
鳴海は瞼の裏に大人のエレオノールの姿を描き出す。
エレオノールはきっととんでもなく美しい娘になるだろう。
成長しきったエレオノールと身体を重ねる自分を想像した途端、ペニスがさらに硬度を増したのが分かった。
伸びやかな肢体を滑らかな肌が包んで、あの素晴らしい瞳がオレを見つめて。
ふくよかで張りのある乳房がリズミカルに揺れる。
蜜で温かく濡れたその中はどんなに気持ちがいいだろう。
淫らに髪を振り乱し、オレの全てに応えてくれるだろう。
舌を絡めあって、愛して…。
ああ、愛しているんだ、エレオノール。
早く大人になれ、オレを、迎え入れられるくらいに…!
鳴海は素早く枕元のティッシュを引き抜くと、それをペニスの先に宛がった。
できるだけ振動がエレオノールに伝わらないように気をつけながら自慰をする。
目と鼻の先にはエレオノールの柔らかそうな唇。
食べてしまおうか、いっそ。
オレのものにしてしまおうか?
『今度こそ』は絶対に手放さない。
『今度こそ』は彼女の全てはオレのもの、誰にも触れさせない。
あの時のように誰かに犯されてしまうのなら、今のうちにオレを刻み付けてしまえ!
ずっと昔、彼女はオレの妻だったのだから!
触れそうなくらいに自分の唇を近づける。
後もう少し、唇を突き出せば奪ってしまえる。
けれど、鳴海は寸でのところで懸命に理性を振り絞って耐え忍んだ。
彼女には触れてはならない!バカヤロウ!
ギイの言葉を忘れたのか!
扱く手を速める。
間もなく、生温かい欲望がティッシュの中に大量に吐き出された。
「駄目なんだ……どんなに愛していても……」
オレは『しろがね』。人外の者。
エレオノールとは時間の進み方が違う。
結ばれることは決してない。今生でも。
「オレのすべきことは……おまえを悪いヤツから守ることだったな……ここんとこ、大事なことなのに忘れていたぜ」
いつまでも一緒に旅ができればそれでいいと思っていた。
エレオノールが大人になりさえすれば、愛し合うことが許されるとどうしてか、勘違いしていた。
子供でも大人でも、愛してはならない人。男として、愛してはいけない人。
「ギイのように、おまえを『妹』として愛せてたらよかったのにな…。こんなに苦しい想いをせずに済んだ」
いつの間にか、一人前の女性として見ていた。こんなにも幼い、のに。
「……うみゅ……おに…ちゃまぁ……」
「なんだ…?オレの夢を見ているのか…?」
鳴海はエレオノールの額に乱れかかる髪を指先でよけた。
愛しい。何て愛しい存在だろう?
おまえは、オレをこんなにも『兄』として慕ってくれているのに、それを愚かな劣情で台無しにするところだった。
「ごめんな……エレオノール」
これからは『兄』として自分を律するから。
保護者として、おまえの成長を見守って、おまえに相応しい伴侶を見つけてやるから。
おまえの、幸せのために。
そう心に誓いながらも自分の我慢がいつまで持つのか、鳴海は全く自信が持てなかった。
夜が長い。
いつになったら出口が見えてくるのか。
鳴海は朝の来ない夜に足を踏み出してしまったような気がして、途方に暮れるしか術がなかった。
End