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義務教育を終えてない方はご遠慮ください。
Unbalance.
14.Crazy for you . - 2 -
「落ち着いた?」
「ああ、すまん…」
鳴海の咽込みが止まるとエレオノールはその背中をとんとんと叩いていた動作を、さすさすと撫でる動作に切り替えた。
鳴海がようやく落ち着き、はあはあと肩で息をつく程度になったので、エレオノールは背中を離れ、その前に回りこんで覗き込む。
「どうしたの、急に。お兄ちゃま?」
身体を丸めている鳴海の視界にエレオノールの下半身が飛び込んできた。
鳴海の心臓が派手に変な音を立てた。ずざざっとソファごと後ろに飛び退さる。
「なっ、おまっ、何てカッコしてんだよ!」
「全部脱いだところで着替え持ってくるの忘れちゃったから取りに来たの」
エレオノールは恥らうこともなく荷物を指差すと、鳴海の前で悠々とそれを漁りに行った。
「着替え着替えっと」
鳴海はぽかん、と口を開けたままエレオノールの裸体を目で追いかける。
4年前からひとりで風呂に入らせるようにして以来、初めて見るエレオノールの全裸だった。
徹底して着替えはシャワールームでして来いと教え込んだので、ここまで何の問題もなく来ていたが、今日、久し振りにエレオノールの成長ぶりを目の当たりにしてしまった。
そして鳴海は驚いた。
胸が膨らんでる……?!
10歳ってもう膨らみ出すものなの?
鳴海は思わず自分の手の平を見つめた。
自分の手の平に収まるにはまだまだ小さくて物足りないけれど、それでもしっかりと乳房が形成されているではないか。
その頂にはまだ陥没している乳首が淡いピンク色を見せている。
背中のラインも腰つきも、白い尻もまだ硬い。
仕草も幼い。
でも。
それも、愛でてやればすぐに丸くなる。柔らかな女の曲線になる。艶を帯びて仕草も女らしくなるだろう。
折角落ち着けた呼吸が、激しく乱れ始める。
ジーンズが急にきつくなった。
「えっと…これとこれ。お邪魔しましたっと……あら、お兄ちゃま?顔がまだ赤いわよ?大丈夫?」
無防備なエレオノールが鳴海に近づいてくる。
理性の糸が切れそうなくらいに緊張している鳴海の元に。
「エレオノール…!」
声が掠れる。
鳴海が長い腕を伸ばした。
大きな手の平が細くて白い腕に間もなく触れる―――――。
コツコツ。
部屋にノックの音が響いた。
鳴海はハッと我に返る。切れかけた理性の糸が元に戻る。
鳴海は腕を急いで引っ込めた。
腕を組むフリをして両手で自分の腕をこれでもかと握り締める。爪が深く食い込んで赤い三日月のような傷をいくつも刻むくらいに強く。
その痛みで愚かな自分を激しく戒めた。
「あ、きっとフロントの人が新聞を持ってきたんだわ!こんな格好を見られたら大変!恥ずかしいったら!」
エレオノールは服を抱えて慌ててシャワールームに飛び込んだ。
シャワールームのドアがしっかりと閉まったのを確認してから、鳴海がノロノロと応対に出ると部屋を訪れたのはやはりフロントにいた男で、
「時間がかかってすみませんでした」
と頭を下げ幾束もの新聞紙を手渡した。
フロント係が去ると鳴海は再びノロノロと室内に戻り、新聞をテーブルの上に放り投げると、どさっと身体をソファに沈め、頭を抱えた。
危ないところだった。
フロント係が来なければきっと、オレはエレオノールを襲っていた。
「今頃……オレは……」
若い果実を貪っていた。
脳裏にエレオノールの乳房が描き出された。
瑞々しそうな、小さな白い膨らみと柔らかそうな若芽のような乳首。
やさしく吸い出してやれば、それは緩く尖った女のそれになるだろう。
淡い桃色も、繰り返し愛撫を受けることで赤く鮮やかに色付く。
そして女の悦びを知れば、細い少女の肢体も…。
鳴海はぶぶん、と首を振った。
だから、オレは何を考えている!
はあっと、大きく息をつき、昂る気持ちを押さえつける。
「駄目だ、もう。何が何でも離れる努力をしなくては…」
理性が持たない。いつか、切れる。ギイに顔向けができなくなる。
エレオノールが自分の前でだけあんなにも無防備に全裸を晒せるのは、『兄』としての信頼を自分に寄せているからだ、鳴海は思う。
その信頼を劣情で汚してしまうことが何よりも恐ろしい。
エレオノールはきっと獣と化した自分を恐れを従えた軽蔑の瞳で見るようになるだろう。
それだけは嫌だ。
嫌だが、それでもエレオノールを欲しいと渇望する気持ちの方が大きくなり、理性が働かなくなる時が近い将来に来る。
必ず、来る。
いつの間にか、エレオノールの身体は大人になり始めていた。
同年代の子よりも幾らか童顔なエレオノールだったし、着痩せしていたから胸が育っているなんて夢にも思っていなかった。
10歳。後2年もすれば、早い子なら成年女性と同じくらいの身長になる。
そして、これまで考えもしなかったが、エレオノールも間もなく初潮を迎えるのだ。
初潮。生理。子供を身ごもることの出来る女の身体となる。
鳴海はクラクラした。
子供を身ごもる身体、とは男を迎え入れることのできる身体、ということじゃねぇか。
精神的なものはともかく、身体だけは最初に大人になる。それも後、短い期間のうちに。
……オレを受け入れられる身体になる。
エレオノールをこの腕に抱く。女にできる。
その現実性が具体的なものとなり鳴海に迫ってくる。
悪魔が囁く。囁く。囁く……。
それを追い遣るために、鳴海は新聞を無造作に広げるとその活字を闇雲に追った。
バサバサと新聞をめくり続ける。
その土地土地で何か不可解な事件・事故はないか、自動人形が関わっていそうな記事はないか。
そのために新聞を読むのは『しろがね』の習慣。
けれど、その内容が鳴海の頭の中に入ってくることはなかった。
鳴海は何度も何度も、自分に悪態をついた。