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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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原作にそったパロディですが

藤田先生のツイッターでの後付け設定である
「鳴海と勝は二度と会わない」
「逆転治療により『しろがね』は徐々に人間に戻る」、
この2点を踏まえていないSS、

またはスピンアウト気味のSSです。


 

 

 

 


 

 

エロワードタイム

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たばっかなのに掃除の手伝いなんてさせて悪いな、しろがね」

今は団長の肩書きが板についたノリが床に散らばった本を拾い集める。

「昨日さあ、事務所で若い連中と酒盛りしたら調子に乗っちゃってさ…この有様なんだよ」

割れたコップを小袋に摘み入れながらヒロが言う。

「オヤっさんが『上に立つ自覚がねぇな!責任とっておまえら3人で片付けやがれ!』って…さ」

ひっくり返った机を元に戻しながらナオタがぼやく。

「いいですよ、これくらいお手伝いします」

しろがねはゴミ袋を手に散乱したゴミくずを集め歩く。

ここは仲町サーカスの事務所。

ヒロの説明通りの、血気盛んな若者たちの盛大な宴の後の片づけを日本に戻ってきて仲町に顔を出したばかりのしろがねが手伝っているところ。

それにしても派手に散らかしたものだ。何があったのかは知らないが、本棚の中身は全部引っ張り出され、机も応接セットも天地が逆さまとなり、窓ガラスはものの見事に割れている。そちらこちらに酒が零れ、酒の肴が床を汚しまくっていた。

共に帰国した鳴海は事務所の外で窓枠の修理に精を出している。

それぞれは黙々と掃除に打ち込む。

黙々と。

黙々と。

……。

そしてそのうちに黙って仕事をすることに三馬鹿は厭きた。

 

 

「なーんかこう…黙って掃除してんのも味気ねぇよなぁ」

「退屈してきた」

「そうだな、何かヤル気の出るようなことでもするか…しろがねもいることだし」

3人は(こんなときばかり気が合うのだが)目と目を見交わして、ニヤリと笑った。

「よし!これからこの事務所の中はエロワード以外の発言は禁止!」

「は?」

「意義なーし!」

「意義なーし!」

「え?え?」

どういうこと?

エ、エロワード?

「さあっ。オレの袋の中にいっぱいゴミをつめて!破けるくらいにいっぱいにして!」

「駄目じゃないか…ここは名古屋だ、分別にはうるさいんだよ…この袋は可燃物もプラスティックも一緒に入れてるじゃないか…悪い子だ…」

「ああっ、そんなに手を奥までつっこんだら…汚れる…」

「オレも手伝うぜ…一つの穴に2本も入れられてキツキツじゃないか…」

へっへっへっへ……。

 

 

な、何この世界?

しろがねは声もなく、その場に固まって変な言葉を吐く3人を見下ろした。

そこに

「ただいまー!頼まれた雑巾を買ってきたよー!」

と中学生になった勝が事務所に入ってきた。

「勝!今、この事務所はエロワード以外は口にすることは許されない。それを守れない勝はお仕置きだ…!」

ごちん、とノリの拳骨が勝の脳天に落ちた。

「お、お坊ちゃま!」

「ああっ!やめてよノリさん…!ぼ、僕、壊れちゃうっ!」

勝は難無くエロワードの世界に飛び込んだ。しろがねは少し、勝を見る目が変わる。

「ほら、ノリさんたちの手で汚してもらいたいっていう淫乱な雑巾たちを連れてきたよ。この真っ白い身体を見るも無残にしてやってよ」

「馬鹿な奴らだな…弄ばれて捨てられるだけなのに」

「それが快感なんだよ。そういう風に生まれついているんだ、雑巾ってのは」

ナオタは雑巾を受け取ると簡易キッチンで絞り始めた。

「もうこんなにぐちょぐちょに濡れてんのかよ」

なんて台詞が漏れ聞こえてくる。

「お、お坊ちゃま…」

しろがねは勝の袖を引いて

「あの、しろがねはよく分からないのですが、今ここは何の世界に突入したのでしょう?」

と縋るようにそっと質問した。

「事務所の中では今、いやらしいことを言わないといけないんだ」

「いやら…、そ、それを言わないといけないのですか?」

「しろがね、ゲームだよゲエム。必要なのはノリだよ」

「ノリ?」

「エロワードを使わないと返事は返ってこないよ?」

僕ももうエロワードを使わないしろがねには返事をしないからねー、と勝はにこやかに離れていった。

 

 

「しろがね」

「はっ、はいっ!」

真面目な顔のノリがしろがねに新たなゴミ袋を手渡した。

「オレたちの間を回ってこの袋を汚れたものでいっぱいにするんだ。貪欲に欲しがるんだ」

「何だ、しろがね、オレたちに回されるのか」

ヒッヒッヒッヒ。

しろがねは半ば諦めて、言われた通りにゴミ袋を広げてゴミを両手に抱えて立っている三馬鹿に近づいた。が、ゴミ袋を捧げ持って近づいても3人はゴミを袋の中に入れない。

「あの…ゴミを…」

「しろがね、言っただろう?今はエロワードタイム。いけない娘だね」

「言いたいことがあるのならちゃんと言ってごらん。何をして欲しいんだい?」

「して欲しいことがあるんだろう?ちゃんと言えたら何でもしてあげるよ」

 

 

しろがねはようやく分かった。

皆は私をからかっているのだ。私にわざと変なことを言わせて恥ずかしがっているのを楽しんでいるのだ。

まさに確信犯。

私が恥ずかしがることが分かっていたのだ。

恥ずかしがらせたいのだ。

勝はにこにこと笑っている。

ここには味方はいないのだ。

鳴海がいてくれれば、あるいは…。

 

 

しろがねは羞恥心を覚えて決して言いたくはなかったけれど、勝の言うところの『ノリ』というのも分からないではない。自分が言わないと場の空気は盛り下がってしまうのだ。

ノリたちをガッカリさせるのは嫌だった。

それに、時に鳴海に似たようなことを言われてないわけでもない。

「わ…」

「「「「わ?」」」」(何故か勝も混じっている。)

「わ・・・私の持っている袋の中を皆さんのモノでいっぱいにしてください…何度でも…いくらでも…入れて…ください…」

「「「「おおう!」」」」

真っ赤な顔で恥らいながら言うしろがねに三馬鹿は鼻の下を伸ばした。

ガサリ、ガサリ!と3人はしろがねのゴミ袋にゴミを放り投げた。

「あっ…そんな乱暴にしないで。もっとやさしく…して」

しろがねは切なげに眉を顰めると、赤い唇をきゅっと噛んだ。

「袋が…破れちゃう」

 

 

たっ、たまらん!、と三馬鹿が鼻血を出しそうになっていると、そこに鳴海が入ってきた。

しろがねは一気に救われたような気分になる。

鳴海は世界中が自分の敵になっても、ただ一人の味方になってくれる男なのだから。

「おおい、ここにゴミ袋ねぇか?表もすげぇぞ?ゴミが散乱してて…」

「鳴海!今、事務所内はエロワードタイムだ。エロい発言しか認めんぞ」

ヒロが注意する。

「エロ?」

「ちなみにゴミを欲しがる淫乱袋はしろがねが持っているがな」

ギイイイ。何だかノリもヒロもナオタもイイ笑顔だ。

勝がコソコソと鳴海に事情を説明する。

「…へえ。で、しろがねもそれをやってんのか?」

「うん」

勝の説明で現状が理解できた鳴海はドキドキしているしろがねの目前に真っ直ぐに躊躇いも無くやってきた。

ナ、ナルミもいやらしいことを言うの?皆の前で?

ふたりきりの時はよく……聞いているけれど……。

そして大男は身を屈め彼女の耳元に口を寄せ

「しろがね、オレのモノをおまえの中に入れさせろ」

と低い声で言い切った。

おおう、と室内がどよめく。

エロ、というよりは何ともストレートな物言い…。

まんまじゃないか?

 

 

 

 

 

エロワードタイム終了後の三馬鹿と勝の同一見解。

一番エロかった発言。

それは鳴海に「入れさせろ」と言われて「はい…」と返事をしたしろがね。

その表情が一番エロかったと思う。

 

 

 

 

End

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