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藤田先生のツイッターでの後付け設定である
「鳴海と勝は二度と会わない」
「逆転治療により『しろがね』は徐々に人間に戻る」、
この2点を踏まえていないSS、
またはスピンアウト気味のSSです。
メリーゴーラウンド
「兄ちゃん、僕たち別行動するね」
「オレたちに気を遣ってんのか?そんなこと気にしないでいいのによ」
「いいの、いいの。じゃ、また後でね!」
僕はリーゼさんと駆け出した。
僕とリーゼさんとナルミ兄ちゃんとしろがね、4人で今日は遊園地。
「別に気を遣っているわけじゃないんだよね」
「そうデスネ。私もチョット、恥ずかしかったデス…」
兄ちゃんたちが見えなくなって、僕たちは他のアトラクションに向かいながら苦笑いする。
ナルミ兄ちゃんは小さい頃から中国で拳法の稽古ばかりして、遊園地、なんて物心ついてからは来た覚えがないと言う。
家業が忙しくて親は連れてきてくれなかったと言う。
しろがねは勿論、人形繰りの練習と人形破壊の旅ばかりで遊園地なんて無縁だったと言う。
遊園地はクラウンのアルバイトで行くもの、客の立場で来たことはないと言う。
ふたりは今日初めて遊園地のアトラクションに乗った。
ありていに言えば、僕だって遊園地に来られる境遇じゃなかったから今日が初めてで、すごく楽しくてはしゃいでる。
でも。
あの大人たちのはしゃぎっぷりには敵わない。
特に、しろがね。
きゃあきゃあと本当に嬉しそうにはしゃいでいる。
生まれて初めての経験で、大好きなナルミ兄ちゃんと一緒で、笑顔が弾けてる。
しろがねがあんな顔で笑えるようになったことはとても嬉しい。
けど。
「傍にいるのはホント恥ずかしいよね、あれは」
「伝染病も大人がかかルと症状は重いデスから…」
「うん、免疫がないとね。何事も」
ふたりともメリーゴーラウンドに乗っただけで周りが呆気に取られるくらいにはしゃげてしまうのだから。
しろがねは一番大きな馬に颯爽とヒラリと跨り、ナルミ兄ちゃんはしろがねの隣の一周り小さな馬を選び(ナルミ兄ちゃんの乗った馬は腰骨が折れそうに見えた)、並んで駆ける、身体が大きく上下する、ただそれだけで声を上げて笑い合っていた。
僕らはふたりのひとつ前の馬の上で、ちょっと小さくなって他人のフリを決め込んでた。
何でか僕たちの顔は真っ赤だった。
「僕たちは僕たちで楽しもうね」
僕はリーゼさんと手を繋いでにっこりと笑い合う。
「ハイっ!」
次に乗りたいアトラクションに向けて僕たちは駆け出した。
遠くから、未曾有の戦いを潜り抜けたふたりのよく通る大きな笑い声が聞こえた。
べ、別に僕たちはそれから逃げたわけじゃないんだよ?
End