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葉見ず花見ず
9月、お彼岸も近くなると道端に群生している真っ赤な花を見かけるようになった。
曼珠沙華。
仏教では天界に咲く花。
それが日本では不吉な花として、彼岸花。死人花、地獄花、幽霊花、捨て子花、狐花、剃刀花の異名を持つ。
毒を持つからなのか、それとも彼岸時に咲くからなのか。
日本人からは忌み嫌われることが多いようだ。
確かに、黒い土の中からニョキニョキと、血飛沫を散らしたかのような紅い花が天に向かって伸びる姿は異様と言えば異様なのかもしれない。
そんな日本的な宗教観のない外国にいた頃は、この花もただの園芸用の花であり、品種改良された白や黄色の彼岸花を見かけることもあった。
まさに所変われば、というやつだ。
日本人だけが抱く、彼岸花のおどろおどろしいイメージ。
私は彼岸花をどうとも思っていなかったが、異国でこの花を『相思花』と呼ぶと知ってから興味を持つようになった。
彼岸花のもうひとつの異名、『葉見ず花見ず』。
彼岸花は花と葉が同時に出ることはない。
花が枯れてから葉が伸びる。
それが「花は葉を思う、葉は花を思う」という意味になったとか。
すれ違う。
ともにあることは許されない。
葉は花に手が届かない。
花は葉を待っていられない。
彼岸。
亡き人を想う時節。
私の中の大切なあなた。
あなたが、少しでも私を想っていてくれたかは分からない。
ほんの短い時間しか、私とあなたはいなかったから。
そうでなくとも、私はお世辞にも、あなたに対して可愛い女ではなかった。
あなたには、迷惑しか、かけていない。
だからきっと、あなたは私に好印象など持ってはいないのだろう。
でも、私はあなたを想っている。
あなたがいなくなってから、姿を現した私のあなたへの想い。
まるでこの、花がなくなってから葉を繁らせる彼岸花のよう。
彼岸花の花言葉。
『哀しい思い出』、『想うはあなたひとり』、『また会う日を楽しみに』、『情熱』。
どれもこれも、私の気持ちにぴったりと当てはまる。
だから私は、彼岸花が好きになった。
まるで私だ。
「幽霊でも、私はあなたに会いたい」
これは私の心の底から咲いた花。
天にいる、あなたに向かって手を伸ばす。
私の代わりに、あなたを想って血の涙を流している。
End