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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。

 

 

 

warning !! 

 

こちらのページにあるものは本当にくだらない話です。

『からくりサーカス』が世界一の大富豪フウのポケットマネーを惜しみなく使って制作された
映画(もしくは大河ドラマ)だったら?
という if ストーリーです。

ここの登場人物は原作のキャラを演じた、あくまで俳優さんたちです。

便宜上、呼び名は作中のキャラ名になってます。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす」

「お疲れ様でしたー!」

 

 

 

 

 

廊下を行き来する人々の挨拶が聞こえてくる。

もうじき23時のどこが「おはよう」なんだよ?

鳴海は悪態をついて顎が外れそうなくらいに大きな欠伸をした。

さっき共演者のひとりが前の仕事が押していて、まだしばらくこちらに来れそうにないという連絡をもらった。

その俳優が来るまで撮影はストップ。

あ~あ、今夜も徹夜になりそうだ。

どうせすることもねぇから控え室で仮眠でも取るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

magic mail

 

 

 

~『からくりサーカス』の控え室~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れみたいじゃん、主演俳優?」

鳴海が畳の上にゴロリ、と横になって間もなく、生意気な口を利きながらその控え室に共演仲間の小学生・勝が入ってきた。

閉じたばかりの片目を開けて、勝が靴を脱いで畳の上に上がってくるのを見遣る。

「おまえだって主演だろ?てか、こんな時間まで何してるんだよ?労基(労働基準法・13歳以下の子役の就労時間は午後9時まで)にひっかかっぞ?」

鳴海は横になったばかりの身体を起こして胡坐をかくと勝に小突く真似をしてみせた。

「僕の出番は9時で終わったよ。じいちゃんがもうじき上がりだって言うから待ってるんだ。それから一緒に帰る」

勝の祖父は共演者の仲町。多くのドラマや映画でよく見かける、渋い演技で定評のあるバイプレーヤー。

「兄ちゃんは誰かの待ち?」

「うん。パンタローネ様。CM撮影が押してんだってさ。確かコーヒーのCM」

パンタローネは世界的に有名なベテラン・パントマイマーだ。今回の『最古の4人』役がはまり役で、周囲からは造物主を差し置いて「様」付けで呼ばれている。女子高生あたりに「キモカワイイ」と評判になり大ブレイク。今やCMにバラエティにと引っ張りダコなのだ。はっきり言って主人公役の鳴海や勝よりも世間的な露出は多いと思われる。

「パンタ様あっての『からくりサーカス』だもんね」

「イリノイ脱出シーンの撮りだからさ。パンタ様抜きで撮れるとこは終わったんだけどな」

「忙しいもんね、パンタ様。この間クイズ番組で『玉乗りの玉作ってください』、って言われて困ってたよ」

「パンタ様、あれが地顔だもんな。パッと見、本当に玉作れそうだし」

鳴海はへへっと笑うと、ちゃぶ台の前でDSを始めた勝に

「サーカスチームは今何のシーンだっけ?」

と訊ねた。勝は画面から目を逸らさずに

「僕はコロンビーヌの最期のシーン。じいちゃんたちはローエンシュタインだって言ってたよ?」

と答える。

「いよいよ話も佳境に入ってきたなァ」

鳴海はこれまでの長い長い道のりを思い返しているのか幾分しみじみした口調になった。

が、ふと、元の話題を思い出したらしい。

「じゃなくて、ガキが夜更かし覚えちゃダメだろ。隅っこで寝てろ」

「今時の子供はこれくらいの時間に寝てるヤツなんかいないよ。塾行って帰ってもこんな時間だし」

ゲームが一段楽したのか、勝は鳴海に顔を向けてフフンと笑う。

片手にDS。大人びたような口ぶり。

「な  ま  い  き  なんだよな~、おまえは!言うことがいちいちいちいち!」

鳴海は勝の首根っこを掴むと脳天にグリグリとウメボシをかます。

「いっ!痛いよ、ナルミ兄ちゃん!もう~、野蛮人なんだから~」

まいったまいった!、と勝が自分の太い腕をペチペチと叩くので、ようやく鳴海は勝を放してやった。

「作中のおまえは可愛いんだけどなぁ。現場離れるとタダのクソ生意気なガキだよな、ホント」

「兄ちゃんはどっちも変わんないよね、『イノシシ』で」

ぽかり。と減らず口のせいで勝はまた頭を叩かれる。

「いった!」

「ギイみてぇなことゆーな」

鳴海は笑っている。本当は実の兄弟のように仲のいいふたり。

 

 

 

 

 

ギイというのは作中人物を地で演じている、フランスの超有名若手俳優。日本人の父を持つためにフランスと日本の両方で活躍している。

鳴海にとって、いけ好かないのも作中と変わらない。でも、(本人達は決して認めないけれど)気が合っているのも変わらない。

「ただでさえ、今はイリノイの流れであいつと一緒の場面の撮影が多くって始終『イノシシ』を連呼されてるんだからよ。アイツと同じコト言うのは勘弁してくれよ。演技がどうの、台詞覚えがどうのってよぅ。小さい頃から子役でならしてたヤツとは違うっての」

所詮、オレは格闘家が本職なんだからよー。

鳴海はぶちらぶちらと愚痴が止まらない。

彼はこの役に格闘の腕と、主人公のイメージにぴったりと合うビジュアルのため主人公に大抜擢されたのだ。だから役者としてのスキルはまるでない。勢いでナンボなのだ。

「いいじゃん。兄ちゃんの台詞は兄ちゃん用になってるんだから。短いし。吼える台詞ばっかだし。最初から頭を使うところなんてないじゃん」

勝は再びDSの画面に集中しながら鳴海の愚痴に付き合っている。

「言ってくれるじゃねぇかよ」

「兄ちゃんはまだいい、って言ってるんだよ。僕なんかさ~妙に台詞が説明くさかったり、説教くさかったりして大変なんだから。色々叩かれて…。それにギイさんには扱かれるし、フェイスレスさんには殴られるし…」

「役の上でだろ?でもさ、フェイスレスさんってすげぇいい人じゃん、実際は。オレ、『サハラ』の撮りのとき何べんもおごってもらったぜ?」

「うん、超悪役、てゆーか超小悪党役、なんだけれどね」

「フェイスレスさんはもうクランクアップしたのか?」

「うん、僕はまだモンサン編の撮りが少し残っているけれど、フェイスレスさんは全部取り終わった。この間、花束もらってたよ」

「そっか。フェイスレスさん、いいなぁ、終わって」

控え室にちょこっとだけ、勝のゲーム音が耳につく沈黙が流れる。自分の傍らで胡坐をかいてゲームの画面を覗き見しているフリをしながら、言い出そうか言い出すのをやめようかと思案している鳴海のことを勝はあえて無視をした。鳴海が何を言いたいのか、勝には予想もついている。

「そんじゃあよう……しろがねは……?」

ほうらね。やっぱりこのネタだったよ。

鳴海の口から「しろがね」という固有名詞が出てきたので勝はDSを一旦止めて、ニヤリ、とイイ笑顔を鳴海にくれた。

「兄ちゃんは気になるの?しろがねのこと」

「べっつに」

鳴海の唇が尖る。

 

 

 

 

 

しろがね(エレオノールと呼ぶ人もいる)はこの作品の勝と鳴海に並ぶもうひとりの主人公役の女優だ。

先のギイの実の妹で、これまた有名子役上がりの有名女優。しろがね役を筆頭に、フランシ-ヌ役、フランシーヌ人形役、偽フランシーヌ人形役、アンジェリーナ役と5役をこなした実力者。子ども時代のエレオノールの場面は兄のギイが用意された子役に満足がいかず(重度のシスコンの彼は「小さい頃のエレオノールはもっと可愛かった!代役などきくか!」とダダをこねた。)結局本人の子どもの頃の映像をうまく繋いで編集したことでも話題になった。

「しろがねもモンサン編は終わったよ。鳴海兄ちゃんに抱きとめられるシーンで終わり、って言ってた」

「そ、そっか…」

鳴海はそこはかとなく顔を赤くして、モジモジとした。

鳴海としろがねはここしばらく撮影現場が離れていたこともあり、ご無沙汰している。数日後に撮影が予定されているこのシーンは短いけれど、ドサクサに紛れてしろがねと密着できることが確実なので鳴海が密かに楽しみにしているシーンなのだ。

「そんなでっかい身体でモジモジしてるの気持ち悪いよ?言いたいことがあるなら言えば?」

「るっせぇなぁ…可愛くねぇ小学生だなァ」

「ふうん、そんなこと言うんだ。答えてあげないよ?何にも」

勝は素知らぬ顔で視線をDSに戻す。勝に訊きたいことが本当にある鳴海は下手に出て頭を下げた。

「すみませんでした、勝サン。あの、しろがねさんと仲町組の俳優さんたち、最近どうなってるんでしょうか?」

『からくりサーカス』、という物語は途中から『サーカス編』と『からくり編』に分岐、当初は同じ流れにいた鳴海たち3人は『軽井沢』を境に、しろがねと勝は『サーカス編』、鳴海は『からくり編』へとストーリーを異にした。

撮影期間が長いためにしろがねと俗にサーカスチームと呼ばれる若手俳優たちは結構楽しくやっている噂はよく聞く。元々『仲町サーカス』がアットホームな雰囲気の中で撮影していることは有名で、打ち合わせとか反省会といった名前の飲み会なども頻繁に行われているという話。

「うん。結構やってるみたいだよ?ノリさんとー、ヒロさんとー、ナオタさんとー」

鳴海は基本的にはサーカス編の登場人物ではないのでそういった飲み会に呼ばれたことはない。サーカスチームと合流したことはあるんだけれど、当初、鳴海としろがねがいい雰囲気を醸していたと小耳に挟んでいる、そしてしろがねに気があるノリたちがワザワザ飲み会に鳴海を呼んでライバルを無駄に増やすわけがない。

「それから僕が『黒賀編』でサーカスチームと収録が別になった頃からリシャールさんも」

「……」

リシャールは日本にも度々公演にやってくる某大サーカスの本物の花形シルカシェン、イケメンで女性ファンも多い男だ。今回はサーカスモノということで自分のところの公演の宣伝も兼ねて特別出演を果たしている。そんなリシャールもしろがねの魅力に参ったひとり。ちょい役だったので収録は短期間で終わったのにどういう伝か飲み会に乱入するようになったらしい。

鳴海は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「最近、しろがねと週刊誌で騒がれてたよね、リシャールさん」

「……」

「……」

「……でホントのところどうなの?しろがね、なんつってる?」

鳴海は身体を小さく小さく勝サイズに縮込めて、じーっと小学生の返事を待つ。『ホントのところ』を知る勝はワザと鳴海に答えを与えない。デカい図体でずっと年上の鳴海は多分に単細胞で素直で、マセて少し小賢しいところのある勝にはとってもイジリ甲斐がある相手なのだ。

「しろがね本人に訊けばいいじゃん。メルアド知ってるクセに」

「知ってるよ…でも、メールしても返事がなくてずい分になるからよぅ。こんなネタじゃ尚のこと訊きづれぇんだもん」

傷ついたような風で唇を突き出す鳴海はちょっと気の毒にも見える。

「ケンカでもしたの?」

「した覚えはねぇんだが」

鳴海は困ったように頭をガリガリと掻いた。

 

 

 

 

 

撮影当初、『勝編』でずっと撮影が一緒だった頃はありていに言って仲がよかったのだ。物語上はケンカばかりのふたりだったが正直馬があってメルアドの交換だって抵抗がなかったし、もっと言えば鳴海はしろがねに一目惚れしていたからしろがねが好意を示してくれたことがとても嬉しかったのだ。別に付き合っていたわけじゃないけれど、すごくいい雰囲気だった。撮影の合間合間には(勝も一緒だったけれど)いつも一緒におしゃべりをして、しろがねもしょっちゅう鳴海の傍に寄って来てて、鳴海が甘いもの好きだと知ったらクッキーとかケーキとか焼いて持ってきてくれたりして文句なしだったのだ。このままだとそのうちに付き合うことになるかも、共演が元で交際開始はよくある話だし、なんて鳴海は考えていた。

それが、ストーリーが分岐してしばらくした頃からギクシャクしだして今に至る。

「した覚えがなくてもさ、やっぱアレじゃない?シャロンさんとの噂」

勝はちょっと前の週刊誌ネタを持ち出す。

「噂、って人聞き悪ィなぁ。オレは何にもしてねぇぞ?ほんのちょっと向こうに気に入られただけで」

「その後、エリさん、ヘレンさん、ベスちゃん、ファティマさん、コロンビーヌ(大)さん……ミンシアさんとは同棲疑惑まで取り沙汰されてたでしょ」

「同棲…ておまえなぁ。小学生がそんな単語使うな。つーか、アレは事実無根だって。たまったま、中国から兄弟子が来ててオレんちで飲み会やって、それでミンシア姐さんも同門だから来て、朝まで飲んで、次の日は早朝からオレも姐さんも一緒のシーンがあるからってふたりでマンション出てったら写真を撮られただけで」

「充分じゃん…普通さあ、もうちょっと気を遣うもんじゃないの?」

「だから気を遣わない程度の関係なんだって、オレと姐さんは!」

勝だって本気で鳴海とミンシアが付き合っているなんて思ってないし、そもそも何度か鳴海の家に遊びに行っている勝は鳴海の自宅がどれだけ女っ気がないかを知っている。でも勝は面白いので鳴海をいじり倒す。

「でもミンシアさんは会見で否定しなかったじゃない?それに空港での別れのシーン、アドリブでキスシーンを入れたことにも含みを持たせてたし」

「知るかよ!オレは受身だっただろ」

「そんなの分かんないじゃん」

勝はニヤッと笑う。こういう時、勝ってちょっと小学生には見えない。

「そりゃそうかしんないけど…でも、オレは姐さんとは何ともないの!」

「ふうん」

「ふうん、て。それにベスもカウントされんのかよ?」

「ベスちゃんてさ、しろがねの子ども時代役に選ばれてたのにギイさんが切った子でしょ?『僕の妹はもっと可愛かったー!』って。すごく力のある名子役だから別の大事な役についたけれどプライドが気付いたー、って大騒ぎになった」

ベスはアメリカでも屈指の名子役で名を馳せている。彼女が主演の映画もある。

「ああ。そんなんでよく『からくりサーカス』に出ること自体を止めなかったもんだよな」

「兄ちゃんのファンなんだってよ?知らないの?何でもいいから共演したかったんだって」

「そうなの?」

「彼女、小さいけれど格闘家オタクなんだって…。兄ちゃんは役者としてはともかく、格闘家としては全米でもタイトル保持者だもんね。かえって棚ボタで兄ちゃんと近い役になれたって大喜びだったらしいよ。知らないの?」

「子役事情なんてオレが知るわけねぇだろ」

「だからカウント。それにアルレッキーノさんも一時期、兄ちゃんにご執心だったじゃない」

「う…アレには困った」

鳴海はげんなりしたように項垂れた。


 

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