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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。

 

 

 

 

 

 

アルレッキーノはモデル上がりのイケメン俳優なのだが少々性癖に問題がある。

「アルレッキーノさん、ホモって有名なんだって?ノリさんたちが言ってた」

鳴海とは因縁のある役柄で何度か撮影を一緒にしたこともあり、どうしてか酷く気に入られた。ピークは『サハラ』で何度すれ違いざまに尻を撫でられたことか。

「アルレッキーノさんはホモ、って言うか…あの人は博愛主義者なんだよ、よく言えば」

と鳴海は苦笑する。

「博愛主義者?」

「そう。男も愛せるし女も愛せる。年齢の垣根もねぇらしいし。ここだけの話、アルメンドラさんのことも口説いたらしいぜ?」

「ホントに?アルメンドラさん(TVにも露出の多い女占い師。これまた特別出演。)っておばあちゃんじゃない」

鳴海は、し、と唇に指を当てて

「アルメンドラさんがおばあちゃんとかおいそれと言うな。誰かに聞かれてアルメンドラさんの耳に入ったらどうする?変な予言をくっつけられっぞ?」

「う、うん」

勝は辺りを窺うようにして口を両手で押さえた。

「で、今のアルレッキーノさんはリョーコ一筋。あの人にはロリータ趣味もあんの」

「あ…それで…最近のリョーコ、ああなんだ。何だか雰囲気が違くて近寄りがたいよね、ってへーまと言ってたとこなんだ」

「んー…意外とリョーコもタイプだったのかもな、アルレッキーノさんて。黙ってりゃいい男だもんな」

アルレッキーノとリョーコのツーショットを見かける度に何ともいいようのないふたりの空気に、「食われちまったのかもしんねぇなぁ」なんて思ってしまう鳴海ではあるが、それを勝に言っても始まらないので黙っていた。そんな鳴海に勝が酷いことを言う。

「兄ちゃんは?男に興味ないの?腐の人たちの間ではギイさんとの同人誌も…」

「言うなよ、それは!あるわけねぇだろ?」

鳴海は腕を手の平で摩りながら勝の言葉を遮った。どうやらホモ扱いされていることに不本意な様子。

「でもさ、ホントに男の人が好きな男の人っているんでしょ?ねぇ、阿紫花さんとジョージさんて付き合ってるってホント?」

「それはガチ。『イリノイ』の間中、マジまいったぜ…出番以外はベタベタベタベタ…嫌になるぞ?男同士のラブシーンをずっと見せ付けられるのって」

「そ、そうだね…」

勝も『軽井沢』時代に阿紫花から向けられた紫色の視線を思い出す。控え室に少し微妙な空気が流れたが

「でもさ、兄ちゃんはすごいよね、共演女優総ナメじゃない」

と勝が話を蒸し返す。

「だから舐めてねぇっつの」

鳴海は顔を思いっきり顰めてみせた。

「どうかなぁ。数が多いからどれかひとつくらいは」

「それを言うならおまえだって。リーゼちゃんとのケンカはどうなったんだよ」

「う…」

ここに来て勝が初めて言いよどむ。

「『才賀勝!黒賀三姉妹とハーレム!恐るべき小学生ホスト!』って煽り文句忘れられねぇなぁ」

鳴海がニヤニヤと笑う。

 

 

 

 

 

『黒賀編』は『からくり編』が佳境に入り「これからどうなるのか!」と煽るだけ煽っておいた状況で唐突に牧歌的な空気で始まり、下世話な言い方をすると、同居する三姉妹が次々に年下の小学生・勝に惚れていく流れだったので、やれ「ラブ米収穫!」だの「ラブゲー」だの「ハーレム」だの手厳しい評価を受けたのだった。

「年上3人を篭絡!って…すごかったよな」

「忘れてよ、そんな三流ゴシップ誌の見出しなんか。話の上で、であって実際に中高生が小学生に興味持つわけないじゃない。そもそもシナリオの展開が突飛なんだよ。イノシシなんだから忘れるの得意でしょ」

勝は嫌味のひとつもくっつけて話をかわそうとするが上手くいかない。鳴海はキシシと笑ってさらに突っ込む。

「それによう、どうすんだコロンビーヌ(小)ちゃん。あの積極的な猛アプローチ、どうかわすんだ?」

「知らないよ。僕が教えて欲しいくらい…リーゼさんは怒ると怖いんだから。ただでさえ黒賀村の一件でオカンムリだったのに…」

コロンビーヌ(小)はフランスの人気アイドルユニットのひとり(同メンバーのディアマンティーナも参加している)。そのコロンビーヌ(小)が甚く勝を気に入って、元より勝とは両思いのリーゼ(リーゼはハーフで帰国子女が売りの日本の売り出し中のアイドル。)とバトルを繰り広げているのだ。

「おまえも結構、皆にいい顔するもんなぁ」

「兄ちゃんに言われたくないってば…じゃなくって、今はしろがねの話でしょ?しろがねがどうして兄ちゃんと連絡を取らなくなっちゃったのか」

勝はようやく話題の軌道修正をする。

「ぐ…」

と鳴海は言葉が詰まる。

「兄ちゃんが共演女優と次々に噂を流すから、しろがねは身の危険を感じて自衛してるんじゃないの?」

「だから、事実無根だってのに」

「シャロンさんの噂の後、何回か共演する場面あったでしょ?その時はどうだったの?」

「『銀の回想』の時はなぁ…しろがねは殆ど金と一緒にいたんだよな」

金はジャ●ーズ事務所の中堅アイドル。本命はしろがねらしいと聞くが、先に出たディアマンティーナとの関係もチラホラ取り沙汰されている。あちこちつまみ食いはできるが本命にはなかなか相手にされない不憫な男だ。

「既にしろがねには防衛線を張られてたよ。役としては…申し分なかったけどな」

鳴海の鼻の下がニヘリと伸びる。しろがね、役名で言えばフランシーヌとのキスシーン&抱擁シーンを思い出したのだ。

「それから『サハラ』での偽フランシーヌとの絡みだろ?それは本当に短い場面だったからな。しろがねと話する間もなかった…んで、仲町サーカスにオレが合流して…しろがねにさぁ、初めに言われたんだよ、『私とあなたとの関係は最悪な状態なのだから、役外でも親しく話したり接したりするのは止めましょう。プライベートから役に入りたいから』ってさ」

「うわ。ずい分キッパリ言われたね…ショックだった?」

「うん…ショックだった。本当に最悪の関係だしな」

冗談抜きで鳴海の仲町サーカス合流後のしろがねとの役上での関係の険悪さったらなく、鳴海は演技をしながら「ここまでやる必要ってあるのか?」と首をひねってしまうくらいだった。芝居の上で鳴海はしろがねを拒絶する。しろがねは健気に鳴海の仕打ちに堪える。そこらへんから鳴海の元に、しろがねの熱狂的なファンから脅迫紛いの手紙やメールが殺到するようになった。けれど憎悪一本槍なシナリオの状況に納得いかないのは鳴海本人も同じだったし、実際に拒絶されてんのはオレの方だぞ?と泣きたいくらいだったのだ。

「まぁ、そんなんで…しろがねとは現場でもロクに挨拶もしねぇ、つーか、してもらねぇし…ノリさんたちには慰めに見せかけた茶化を入れられるしよ…地獄だったさ…」

鳴海の頭の上に負のオーラが噴出している。勝は苦笑しながら「ご愁傷様」と言って慰めるのが精一杯だった。

「オレだってしろがねにどうして避けられてんのか分かんねぇんだって。教えてもらいてぇくれーだぜ……あれ?元々の話ってさ、しろがねとリシャールがどうなってんのか、じゃなかったっけ?で、どーなんだ、オイ?しろがねとあの野郎は…」

 

 

 

 

 

「よう、鳴海、元気かあ?」

「お、勝。おやっさんのこと、ここで待ってたのか?」

その時ノリとヒロが鳴海の控え室にやってきた。ノリとヒロは人気のある若手のお笑いコンビだ。人気もさることながら肉体派体育会系のふたりは運動神経のよさも買われてこの役に選ばれたらしい。

「あれ?撮影終わったの?」

「おう、今さっき終わった。おやっさんがおまえのこと探してたぜ?」

「早く行けよ。ウロチョロすんな!って雷が落ちるぞ?」

「うん、ありがとう。兄ちゃん、それじゃ話の続きはまた今度ね」

「おう、おやすみ」

肝心なところで話半分だが仕方が無い。鳴海はノリとヒロの間を潜り抜けるようにして出て行く勝を手を振って送り出した。それと入れ違うようにしてノリとヒロが畳の上に上がってくる。

「なぁ、聞いたか?またマジックメールらしきものが飛び交ってるらしいぜ?」

ノリが膝を折りながらニヤニヤと話を切り出した。

「マジックメール?」

「ロ●ブーの番組の企画だよ」

「ほら、前回の特番の時にナオタが引っかかって落とし穴に落とされたヤツだよ」

「ああ、アレ?」

番組のターゲットにされた男が偽番組で共演した女の子とメルアドを交換する。すると女の子から宛て先を間違ったメールが届く。そのメールにはターゲットに好印象を持っている、という内容が書かれており、それを真に受けた哀れな犠牲者が下心丸出しの返信をしようものなら別人から送られてくる色よいメールで『女に飢えた』現状を徹底的に暴露され、落とし穴に落ちる瞬間までプライベートをひん剥かれるという悪趣味で可笑しい企画。

「ナオタ、がっついちまったんだよな。どう考えてもアイドルに一目惚れされるようなツラじゃねーのに」

「オンエアで大写しにされたアホヅラ、忘れらんねー」

ノリとヒロがヒヒヒと笑う。やはり他人の不幸は蜜の味。ちなみにナオタは彼らのお笑い芸人仲間だ。

「でさ、この間オレんとこにも怪しいメールが送られてきたんだよな。ちょっと趣向が変わってたけど。なーんだかアヤシかったんだ。よかったよ、返事しなくて」

でもそう言いながらもノリは後で直接、「メールが間違って届いたけど」と言うつもりではいるのだが。

「そうそう上手い話ってないもんな。ちょっとでも変、って思うことには注意しねぇと」

「目ぼしい芸人なんかはいつどんな釣りが待っているか分かったもんじゃないし」

鳴海はふうん、芸人てのは本当に大変だよな、なんて他人事のように聞いていたが

「おまえも気をつけろよ、鳴海」

と言われた。

「オレ?」

「おまえは芸人じゃないけどさ、さりとて完璧な二枚目ってわけでもないし毛色が変わって番組的に面白いだろうしな」

「まー、おまえは浮いた噂ばかりだから制作者サイドからは女に不自由してないように映るかしれないけど」

「人聞きが悪いっすよ…」

鳴海は一気にぶすっとした顔になる。

「逆に不自由し過ぎて女に声かけまくっているように思われるか、どっちかだよな」

「だから、オレは声かけたりしてねーってのに!」

「そうかなぁ」

「そうっすよ!だから今度飲み会に誘ってくださいって。しろがねも来るときに」

「いやあ、しろがねは女ったらしからは守らないと」

ノリとヒロは真面目な顔で鳴海の飲み会参入をビシッと断る。

『おまえらがしろがねに在る事無い事吹き込んでるんじゃねぇだろな?』

鳴海が訝しんだ三角目をふたりに向けているとスタッフがパンタローネの到着を報告に来た。

「パンタ様待ちだったのか、鳴海?」

「そうっすよ。ずっと」

「売れっ子だもんな、パンタ様…そんじゃ、お先」

「お疲れ様っす」

ノリとヒロは大雑把に靴を履くと、そのまま控え室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノリとヒロがいなくなり静かになった控え室で鳴海は大きく伸びをすると、よっこらしょ、と立ち上がった。壁に掛けてあった黒い繋ぎの衣装に着替え、手袋を手に取り、靴にガフッと足を突っ込む。

「さあて。NG出さねぇようにして、とっとと撮りを済まして帰って寝よう…」

話相手がいなくなった途端に眠気がぶり返してきた。くあっと欠伸を噛み殺す。

と、両足ともきちっと履き終えたところでメールの着信音が聞こえた。すぐさま、鳴海は血相を変えて土足であることにもお構いなく、バタバタと四つん這いでテーブルの上の携帯に飛びついた。ガタガタっと派手な音を立ててテーブルがひっくり返る。天板がごちっと脳天に当たったがそれもお構いなしだ。

だってそれは、ここしばらくご無沙汰をしていた、しろがね専用の着信音!

(鳴海がどんな着メロをしろがね専用にしているかは皆さんのご想像にお任せします。)

ぺいっとテーブルを押しのけてムクリと起き上がる。

「し、ししっ、しろがね?」

確かに携帯のディスプレイには右から左に流れていく『しろがね』の文字。

「な、ななっ、何っ?」

指先が震えるために何度も誤操作を繰り返す。肝心なメールがなかなか開けられない!

「ち…ただでさえ指が太ぇから間違いやすいってのにっ…えいっえいっ…あ、出たっ、なになに…?」

そこにはこんな文面が。

 

 

 

『でも、噂になった女優さんはナルミが好きなのは確かだし、本当にそのうちの誰かとはつきあったかもしれない。火のないところに煙は立たないと言うだろう?今思えばヤキモチを妬いて口を利かなくなった私が愚かだったって分かっている。メールに返事をしなかったのも子どもじみていた。そのせいでナルミから全く連絡がこなくなってしまったのだから。自分が招いたことだって分かっている。だけどヴィルマが言うように私から何かをするなんて絶対にできない。無理だ』

 

 

 

絵文字の全く入らない、用件のみのメール。確かにしろがねのメールだ。

「……これって……どういうこと?」

しろがねはオレからの連絡を待っているってこと?ヤキモチ?、ってオレに気があったってこと?

「……」

しろがねはどうやらヴィルマ(タイプはしろがねと真逆の女豹系だが、ものすごく気が合うらしく、しろがねの親友)にメールを送るつもりが間違いで鳴海のところに送ってしまったらしい。

鳴海は出番も忘れ、(土足のまま)控え室にドカッと胡坐をかいて、小さな画面に大きな身体を丸めてじっと見入って考える。何度も何度もしろがねからのメールを読み返す。考えることは不得手の鳴海が真剣に考える。

「…『ヴ』と『カ』もしくは『ナ』。…普通、間違えるか?」

鳴海とも頻繁にメールをやり取りしているのなら履歴を使う際に間違った、とも言えなくはないが残念ながら鳴海⇔しろがねのホットラインは絶えて久しい。間違うためにはワザと間違えないといけないのでは?

鳴海の眉間にぎゅっと皺が寄る。

「やっぱこれって…さっきノリさんが言っていたマジックメール、ってヤツなのかなぁ…」

ササッと控え室の天井やら何やらに素早く視線を巡らすが特に隠しカメラと思われるものは見つからない。でもすでに自分は某番組の監視下に置かれているような気がしてならない。

「ま、今時の盗撮カメラはちょっと見じゃ分かんねーからなぁ…」

鳴海の右親指が空を押す。

 

 

 

 

 

釣り、か。

それとも純粋に、間違い、か。

嘘、か。

真、か。

カラカイ、か。

マジで惚れてんのか。

 

 

 

 

 

「ううううう~ん。どう受けとりゃいいんだよ、これ…」

鳴海は頭を抱えて苦悩する。

「鳴海さ~ん。そろそろお願いしま~す」

スタッフが呼びに来た。

「い、今すぐ行きますからっ」

大声で返事をして、大急ぎで結論を出す。

仮にこのメールの内容が本当ならば、メールを返しても何ら問題がない。これをきっかけに一気に畳みかけるだけだ。

仮にこのメールが番組の用意したダミーだったら…。

「おしっ、決めたっ」

鳴海は唇を噛み締めるとしろがねに当ててメールを打ち出した。

 

 

 

『久し振り。ヴィルマ宛のメールが何でかオレんとこに来たぞ。悪いが読んだ。前もって言っとくが、オレは共演女優の誰とも付き合ったことはないからな。火のないところにも煙を立てるのが芸能界だってよっく分かった。だがもしも、おまえもリシャールとの間に立ってる煙の元に火がないってなら、オレと付き合わないか?』

 

 

 

ピ。送信。

鳴海はふーっと深く息をついた。心臓がドキドキしている。

何しろ今、さりげなく告白をしたのだから。

もしも、このメールがダミーでもかまうもんか!ふざけた番組の流れに逆らって、本当にしろがねを落としてやらぁ!いっそ放送禁止なことをやってやる!

「もしも玉砕でも…その後に待つのは相変わらずの憎悪関係だしなっ!」

初めて演技に身が入るかもしれん。

そんな自虐的なことを考えながら鼻息も荒く、鳴海は携帯をふたつに折った。そしてそれをテーブルの上に放り投げるとドスドスと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、誰もいない鳴海の控え室に鳴り響く、しろがね専用着信音。

さて、そのメールの内容は一体……。

 

 

 

 

 

to be continued.....

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