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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

続・戦場にかける愛

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「エレオノール少佐」
「何でしょうか、加藤中佐」
「オレはたった今、おまえに対して劣情を催した。だからおまえに伽の相手を命じる」
「……お断り致します」
 
 
 
 
 
リーゼ中尉は目の前の、自室よりも立派な扉の前に立ちスウっと深呼吸をした。
ここは加藤中佐の居室。
加藤中佐はリーゼ率いる小隊の所属する大隊の指揮官だ。
自分よりも階級が3つも上の上官に、この度の作戦における自分の小隊の報告書をあげるという業務はいつになっても、真面目なリーゼは緊張してしまう。
例えそれが、目下の者に対してかなりフランクで、細かいことなどには凡そ興味のない男であってもだ。
リーゼは、きゅ、と唾を呑み込んで軽やかに扉を叩いた。
「リーゼ中尉参りましタ!失礼しマス!」
部屋の中からは明確な返事はないものの、何やら声は聞こえてくるのでリーゼ中尉は勢いよく扉を開けた。
 
 
 
 
 
「いいじゃねぇか、減るモンじゃなしッ!」
「屹度減ります!やめてくださいって言っているでしょう!」
「おまえ、上官の命令が聞けねぇってのかよ?」
「例え上官の命令でも承服出来ない命令をきくことなど出来ません!」
「何で承服出来ないんだよ?」
「何でも何も!何が『劣情を催した』、ですかッ!他に言い方ってものがあるでしょう?いい加減にしてください!」
 
 
加藤中佐がエレオノール少佐を応接ソファに押し倒してくんずほぐれつ……。
 
 
 
 
 
「あ」
室内に入っていきなり目に飛び込んできた修羅場にリーゼ中尉は思わず声をあげてしまった。
黙って退室して出直せばいいものを!、と自分の精神鍛錬の至らなさを痛感する。
思いがけない事態を目の当たりにしたときに冷静な行動を取れない者が過酷な戦場で生き残れる筈もない。
加藤中佐もエレオノール少佐も突然の闖入者に身体を離す。
加藤中佐は渋々と、エレオノール少佐は見るからにホッとした表情で。
「どうかしましたか、リーゼ中尉」
エレオノール少佐が瞬く間に乱れた服装をピシッと直し、柔らかく微笑みながらリーゼ中尉に近づいた。
 
 
エレオノール少佐はどんな猛者をも骨抜きにするという美貌の持ち主。
かてて加えて明晰な頭脳と冷静な判断力で、他の追随を許さない軍参謀だ。
エリート軍人一族の出身で、戦場で他にも銀目銀髪を見かけたらそれは確実に彼女の身内に間違いがない。
彼女の祖母・ルシールは老いても今だ現役の元帥として名高いし、母のアンジェリーナは戦地で夭逝してしまったが伝説の将官であった。
エレオノール少佐はリーゼ中尉と同じく一人娘ながら軍人として育てられ、女だてらに軍服に身を包み荒くれ兵士の上に立つ、数少ない同環境の人。
そして憧れの存在。
リーゼ中尉はエレオノール少佐を姉のように慕っていたが、エレオノール少佐もリーゼ中尉を妹のように思ってくれているようで何かと気をかけてくれるのだった。
 
 
「報告書を提出に参りまシタ…ガ、あのッ、お取り込み中のところ申し訳ありまセンでしタッ!」
リーゼ中尉はババッと腰を90度に折る。
この謝罪はエレオノール少佐に向けてではなく、ソファで膨れっ面をしている加藤中佐に向かってのものだった。
「いいのですよ、気にしなくても。頭を上げてください」
「はッ!」
「節操のない上官を持つと下の者が苦労するいい例です。リーゼ中尉は加藤中佐を反面教師にして精進してください」
「は」
い、と言っていいものやらリーゼ中尉は判断に苦しんでしまう。
何故ならどちらも自分の上官なのだから。
当の加藤中佐はソファにふんぞり返ったまま開いた胸元のシャツを直すわけでもなく、つれない上に上官の自分に説教を垂れるエレオノール少佐に対し、ケ、と舌を出している。
「加藤中佐、リーゼ中尉の報告書です。机の上に置いておきますから後で目を通して…」
「オレ、たくさんの文字を読むと頭が痛くなっからおまえに任すわ。特にリーゼ中尉の報告書はびっちり書き込んであっから苦手なんだよ」
「は!申し訳ありまセン!」
苦手、と言われてしまったリーゼ中尉は恐縮し、またも腰を直角に折る。
「いいのですよ、気にしなくても」
エレオノール少佐がリーゼ中尉に身体を起こすように言う。そしてコソッと
「加藤中佐はあなたの報告書がしっかり書けていると褒めているのですから」
と囁いて笑った。
 
 
「リーゼ中尉」
加藤中佐がニヤニヤとしながら声をかけてきた。
「ここんとこ、ずい分張り切っているそうじゃねぇか?色々噂は聞いてるぜ?そのお気に入りは磨けば光る玉か?」
加藤中佐が才賀曹長のことを言っているのが分かり、リーゼ中尉は思わず
「はい、才賀曹長は必ズ!」
と即答していた。
曹長とはいえ一下士官が大隊長に気に留めてもらえることなど殆ど有り得ない。
もしも名前を覚えてもらえるのなら、それは奇跡にも近いことなのだ。
加藤中佐は必死とも思えるリーゼ中尉の眼差しを受け止めてニヤリと笑った。
「サイガ曹長ね……。ま、絞るのもいいが、そいつが壊れちまわねぇように程々にな」
「はッ!」
「そいつがM男だったらリーゼ中尉に扱かれても問題ねぇんだけどな」
「加藤中佐!」
加藤中佐は下世話なことを口にしたせいでまたしても部下のエレオノール少佐に窘められた。
 
 
「それでは失礼しマス!」
報告書を提出し終わったリーゼ中尉は直立不動の姿勢でビシッと敬礼をする。
エレオノール少佐もピシッと敬礼を返し、加藤中佐は「そんじゃあな」と手を挙げる。
リーゼ中尉はキビキビと扉に向かい取っ手に手をかけたものの、何やらを考えてそれからもう一度振り返った。そして
「エレオノール少佐、大変恐縮ではありマスが、個人的にお訊ねしタイことがございマス。御手隙の時で結構デスのでお時間を割いテ頂けないでショウカ」
と切り出した。
「今で構いませんよ、何でしょう?」
「はい…」
エレオノール少佐が快諾してくれたのはいいのだが。
加藤中佐がいるところでは何となく躊躇われる内容だった。
図らずもリーゼ中尉はチラッと視線をほんの少し上げてしまい、エレオノール少佐の後ろにいる上官の存在が気になることをアピールしてしまった。
「エレオノール少佐、オレちょっと出てくるわ。ここでゆっくりリーゼ中尉の話を聞いてやれ」
加藤中佐が立ち上がる。
「そんな、加藤中佐!お気遣い頂かなくテモッ!恐れ多いデス!」
リーゼ中尉は上官に気を遣わせてしまったことを悟り、慌てて自分が退室しようとする。
「気にすんな。ちょっと身体を動かしてぇって思ってたとこだったからよ。そこのイジワル女相手に発散できなかったのが溜まってっから何とかしてくるわ」
エレオノール少佐もそれを気にする風でもない。
心配そうなリーゼ中尉を尻目に加藤中佐は「ごゆっくり」と、のんびりと部屋を出て行った。
 
 
「さあ、お掛けなさい。鬱陶しいのがいなくなりましたから気兼ねなく何でもどうぞ」
「はッ!失礼しマス」
加藤中佐に申し訳ないと思いつつ、リーゼ中尉はキビキビと着席した。
「それで私に訊ねたいこととは何ですか?」
エレオノール少佐もリーゼ中尉の向かいにゆったりと腰を下ろした。
リーゼ中尉は余計な前置きなどせずに本題に入った。
「単刀直入にお訊ねしマス。大変不躾であルことは重々承知、御叱責も覚悟の上でお訊ねさせテ頂きマス。
エレオノール少佐は如何しテ昇級を辞退なさっテおいでなのデスカ?」
 
 
エレオノール少佐はもう何年も少佐のままだ。
こんなにも有能な佐官が何年も昇級しないのはどう考えても不自然なのだ。
彼女自身の実力と軍部に影響力のある名門出身という後ろ盾を考えれば既に大佐、若しくは少将になっていてもおかしくはないのだ。
リーゼ中尉がこの大隊に所属する以前から、エレオノール少佐は加藤中佐の参謀を勤めている。
リーゼ中尉が知る限りでもエレオノール少佐はもう3回も昇級を辞退している。
先日の辞令では2階級特進で大佐になれたのにも関わらず、だ。
「私には参謀役が性に合っているから、ではあなたにとって満足いく回答ではないのでしょうね」
「申し訳ありまセンがその通りデス。参謀ならバ中佐でも出来マスカラ。
軍の上層部はエレオノール少佐に大隊……いえ、連隊を指揮しテもらいたがっテイルと聞き及んデおりマス」
エレオノール少佐はリーゼ中尉の率直な問いと真剣な眼差しに少し困ったような笑顔を見せた。そして、はにかんだように
「少佐でいなければ、中佐の部下としての参謀ではいられませんから」
と答えた。
 
 
加藤中佐は裸一貫の叩き上げ、戦場での功労を認められ己の実力だけでここまで伸し上がってきた男だ。
何の後ろ盾も人脈もない男が、短期間で中佐となり大隊の指揮を任されることなどそうはない。
戦場に出れば指揮官ながら自ら先陣を切り獅子奮迅の活躍をする猛将。
エレオノール少佐には『猪猛者』と揶揄されるが、部下の面倒見もよく人柄は温かい。
手柄を鼻にもかけず、まるっきり野心家でない彼は上からの覚えも目出度いと聞く。
ふたりが出会った時は、エレオノール大尉と加藤上等兵だった。
その後、加藤中佐は手柄を上げメキメキと昇級し、エレオノール少佐は階級を一つ上げただけで何年も足踏みしている。
 
 
「加藤中佐は…実力のある反面、策略や兵法にはとんと疎く、凡そ動物的なカンだけで動く人です。それが的確だから驚きなのですが…。
けれど、平気で先鋒に立ち、撤退時には殿につく、危険な任務を部下任せにせずに率先してしまう人だから誰かがブレーキをかけて補佐してあげないと命が幾つあっても足りません。
これから先、彼の動かすものの規模は大きくなるばかりですから」
加藤中佐を語るエレオノールの少佐の瞳はやさしく、熱い。
「エレオノール少佐は加藤中佐のためニ…」
「私の方が上官になってしまうと彼の参謀ではいられなくなってしまいます」
「自ラの立身出世をお捨てになっテモ」
「それだけの価値は彼にあると思います。私の手で加藤中佐をできるだけ高いところへ押し上げてやる、それが私の夢ですから」
ああ、とリーゼ中尉は声を漏らした。
私も才賀曹長とそのような関係になれたらどんなに素晴らしいだろう、リーゼ中尉は加藤中佐とエレオノール少佐を自分たちに置き換えてみた。
才賀曹長が自分の上官になればもう少し、自分に対して強気になってくれるかもしれない、そんな希望も湧いてくる。
しかし、才賀曹長と加藤中佐では根本的なものが何処か違うような気がしないでもない。
 
 
「エレオノール少佐。つかぬ事ヲお訊きしマスが、加藤中佐といウ方はエレオノール少佐の部下だった頃はモットこう…何て表現すれバいいノカ…」
「彼は変わりませんよ。上下の厳しい軍隊の中で…最初っから言葉遣いがまるでなっていなくて何度叱り飛ばしたか」
当時を思い出してか、しろがね少佐の形のいい眉が曇る。
だらしがない、というのではなく、作戦を離れた時の言葉遣いなどは彼にとっては枝葉末節なことに過ぎないようで「規律が乱れる!」と眉尻を上げる彼女を屈託のない笑顔で受け止めた。
その笑顔に何度脱力させられたことだろう。
何度叱られても、厳罰にも減俸にもへこたれない図々しさ、よく言えばタフさが昔からあった。
彼女の祖母・老元帥ルシールに「よぅ、ばあちゃん」と肩を叩いたときは流石のしろがね少佐も凍りついた。
意外にもそれがルシール元帥に気に入られるきっかけになろうとはエレオノール少佐も当の加藤中佐も思ってはいなかったのだが。
「はっきり言って馴れ馴れしかったですよ」
リーゼ中尉はそれが「羨ましい」と思った。
 
 
「リーゼ中尉」
「はい、何でしょうカ?」
「如何してこんなことを私に訊きたいと思ったのです?」
「え、は、それハ…」
いきなり質問を自分に振られ、リーゼ中尉はしどろもどろになった。
「顔が赤いですよ?」
「あ、はいッ!未熟者故、申し訳ありまセン!」
「それは、あなたもまた、中隊付き幹部になる話を断り続けていることに関係がありますか?」
「……はい。その通りデス」
リーゼ中尉は素直に認めた。
中隊付き幹部になれば功労次第で中隊長になる道も開ける。
今の小隊長よりも遥かに大きな規模の作戦に参加でき、手柄も上げられる。引いては出世ができる。
しかし、どの中隊に配属されるかは神のみぞ知る、だ。全く違う部隊に移動になるかもしれない。
運よく加藤中佐の大隊の中の中隊に配属ならまだいいが、それでもおそらく才賀曹長の直属の上司ではなくなってしまうだろう。
受諾しないのは今いる小隊に才賀曹長がいるから、それに尽きるのだ。
父の名前のおかげで我が儘が言えることに、この件でばかりは父に感謝をしてもし尽くせない。
思い詰めたようなリーゼ中尉の空気にエレオノール少佐は昔の自分を思い出す。
「御武運をお祈りします」
エレオノール少佐は詳しいことは訊かずにそう話を締めくくった。
「ありがとうございます」
リーゼ中尉はエレオノール少佐の気遣いに感謝した。
 
 
 
 
 
「それハそうと、先程は申し訳ありまセンでしタ」
話が一段落着いたところでリーゼ中尉が謝った。
「何がですか?」
「あの、入室しタ際の…おふたりの邪魔をしテしまいまシタ。大変無粋だっタと反省しテおりマス」
ああ、そのこと。
エレオノール少佐が可笑しそうにクスクスと笑う。
「本当にいいのですよ。いいタイミングでした。あそこで制止が入らなければ加藤中佐が困っていたでしょう」
「は?」
「レク、みたいなものなのですよ、私たちの」
「はい?」
リーゼ中尉にはエレオノール少佐の言っている意味がよく分からない。
「私たち、周囲が考えているような深い関係ではないのですよ」
 
 
「え、でも、そんな、中佐と少佐はデキていルって部下は誰デモ…あ!申し訳ありまセン!失礼しまシタ!」
エレオノール少佐の衝撃的な告白にリーゼ中尉は興奮からつい上下の礼儀を逸した言葉遣いになってしまい、慌ててバッと頭を下げた。
エレオノール少佐は相変わらず、「いいのですよ」とやんわりと微笑んでいる。
「でも本当なのです。きちんと求愛されたこともありません。いつも冗談めかして言うだけで」
「それデモ…出過ぎタこととは分かっタ上で言わセテ頂きたイのデスが、加藤中佐はエレオノール少佐のことをお好きなのは確かデス。
私の目にはそう見えマス」
そしてエレオノール少佐も加藤中佐を想うが故に彼の部下でい続けるのだろう。
ふたりは想い合っている、リーゼ中尉は今日でそれを確信した。
ありがとう、エレオノール少佐は涼やかに微笑んでいる。
「ハッキリと言葉にしてしまったら、それを断られたら、それならいっそ、冗談で済まそう。彼の意気地がないのですよ」
「加藤中佐に意気地がナイなんテ……」
才賀曹長に意気地がない、というのなら分かる。
だが、あの豪胆の塊のような加藤中佐が意気地なし、と言われても全くピンとこない。
「それに身分違い……屹度そんなことを考えているのだと思います。私は重たい家柄を背負っていますし……確かに階級は彼の方が上ですが、私が昇級を辞退していることを勿論知ってます。本来だったら自分より上官、そんな風に考えているのでしょう。だからあんな風にふざけた形でしか気持ちを表せないのかもしれません」
「エレオノール少佐は加藤中佐の気持ちを分かっテらっしゃルのデスカ」
「あなたが見たじゃれ合いだっていつも誰かがこの部屋に来るのが分かって、その直前に始めるのですから。止めてもらうことも計算の内なのですよ」
「……」
「それを目撃した人に実しやかに噂を流してもらえば…あんな腕っ節だけが取り得の、格闘にかけては右に出る者のいない男の女にちょっかいを出そうって考えは誰も持たないでしょう」
銀色の女性は心底可笑しそうに目元を柔らかくした。
「エレオノール少佐はこの先も…それデいいのデスカ?」
「大事なのは形なのではなく、その人と共にあることです。尤も、加藤中佐に意気地がつくまで私はずっと待っているつもりでいるのですよ」
戦場では敵に「死の女神」になりうる彼女たちも、任務を離れれば所詮は人の子、男を恋い慕う乙女だ。
ワルキューレだって恋をする。
時に、恋の話に花を咲かせることもある。
 
 
戦乙女も、乙女は乙女。
 
 
数年後、自分と才賀曹長が、この加藤中佐とエレオノール少佐のようになれていたらいい、とリーゼ中尉は改めて思った。
屹度、ここまでになるのにエレオノール少佐はかなり悩み、苦労したのだと思う。
それがどんなに茨の道でも、力強い先輩の残してくれた轍を自分も歩いていこうとリーゼ中尉は心に決めた。
とはいえ、「あの」才賀曹長に意気地がつくのを待っていたら一体何年、いや何十年かかるだろうか?
やはり、特訓あルのみ!『指導』を厳しク、コマメにすルしかあるマイ!
リーゼ中尉は背中を後押しされ、さっぱりした、そして決然とした面持ちで退室していった。
 
 
 
 
 
「よー。リーゼ中尉、何だって?」
リーゼ中尉が退室して数秒も置かずに加藤中佐が戻ってきた。
彼は女ふたりの話が終わるのを、自分の部屋が見渡せる極近距離のどこかでじっと待っていたに違いない。
エレオノール少佐は加藤中佐のその姿が容易に想像ができて、早速読もうと手にしていたリーゼ中尉の報告書でさりげなく口元を隠した。
そして、自分たちの内緒話の内容を加藤中佐が物凄く気にしていることを知りながら
「女同士の他愛ない話です。加藤中佐がお気になさるほどのものではありません」
とサラリと返事をする。
「そりゃそーだろーけど」
だからこそ気になると言うのに。
加藤中佐は予想通りの返答に口を尖らせた。
 
 
 
 
 
「私が加藤中佐と出会って来に苦しめられている悩みと同じ悩みで、リーゼ中尉は苦しんでいるのですよ」
「何?おまえ、悩み事なんてあったの?」
「……私が如何して悩んでいるのかも分からないような人に、リーゼ中尉の真剣な悩みの内容なんて話したところで茶化すだけで理解できません」
「何だよ、それ」
 
 
 
 
Fin.
 
 
 
 
**********
私の悪いクセで、鳴海とエレを結びつけて続編を書きました。リーゼとエレ、それぞれがそれぞれの想い人のことで悩んで語らっている姿もいいなぁ、なんて思い妄想が噴出しまして。自分と同じような恋愛をしているいい例が近くにあれば、リーゼ中尉も才賀曹長への『指導』にもきっとリキが入るでしょう。リーゼ中尉にはガンガン職権乱用をして頂きたいものです。
それと、私は軍の階級のこととかまるっきり無知無学です。
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