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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。

 




 

give him a hug

 

 

 

 

 

 

「はい、コーヒー」

しろがねは鳴海に湯気の立つコーヒーカップを手渡した。

「おう」

ソファに腰掛けた鳴海は新聞から目を離すことなくカップを受け取り無言でコーヒーをすすった。

何がそんなに興味のある記事なのか知らないが、さっきから黙々と鳴海は広げた新聞に目を通している。

ソファの背もたれに深く寄りかかって、脚を組んで、足の先にひっかけたスリッパをプラプラさせて。

つまらない。

拗ねた時に唇が尖る鳴海のクセをしろがねは真似てみた。

 

 

 

新聞なんて、私が帰った後にだっていくらでも読めるのに。

 

 

 

さっきから鳴海の口から出るのは生返事ばかりで、ほとんど会話もなくて。

しろがねは膨れた唇でコーヒーに触れてから、それが煎れたてで物凄く熱かったことを思い出した。

「熱っ」

と舌を引っ込めて、自分が熱い思いをしたことも目の前の男のせいだと更に唇を尖らせた。

しろがねがコーヒーカップをローテーブルの上に置き目の前から移動しても、鳴海は新聞を読んだまま。

しろがねはそうっと鳴海に近づいて、ソファ越しに後ろから抱き締めた。

鳴海の太い首に腕を巻きつけて頬と頬を寄せる。

鳴海の瞳は思わぬことに宙を泳ぎ、どこまで読んだか分からなくなった。

 

 

 

「私よりも新聞が好きなら、私は帰る」

「い、いや…すまん」

何だかこんな風に、しろがねに包まれるように抱き締められるのって初めてで。

しろがねの方から抱きついてくることも滅多になくて。

「もしかして淋しかったりした?」

「うん…」

こんな風に素直に甘えてくるしろがねも珍しくて。

鳴海は新聞を床に落とした。

「どっか、出かけよっか?」

「うん…。でも今はこうしていたい」

大好きな匂いがする。

しろがねは瞼を閉じた。

 

 

 

「おまえより新聞が好きだなんて、あるわけねぇじゃん」

鳴海は腕を回してしろがねの髪を撫でて、ちょっと嬉しそうに小さく笑った。

 

 

 

End

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