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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。


 





 

耳朶

 

 

 

 

 

 

 

今日は十五夜。中秋の名月。

今、鳴海の家でしろがねは『月見だんご』の作り方を鳴海から教えてもらっている。

仲町サーカスのみんなに食べてもらいたい、と思ったから。

 

 

鳴海はこう見えて、料理が上手い。

「上新粉に白玉粉、個人的に甘いほうが好きだからオレは砂糖も入れる。これに熱湯をこう…」

湯気の上がるふたつの鉢の中身を鳴海は手際よく杓文字でかき回し

程よく冷めたところで鉢のひとつをしろがねの前に置いた。

「これを柔らかくなるまでこねて。そうこれくらい」

鳴海は何の気なしに、しろがねの耳朶を指で挟んだ。

しろがねにとっては予期しない、とてもとても感じやすいところへの鳴海の温かい指の感触。

親指と人差し指が彼女の耳朶を摘まみ、残りの指がうなじを掠める。

 

 

「あんっ、や…っ」

図らずもしろがねの口から出てしまったのはとても甘く艶かしい声。首をすくめるしぐさも何だか婀娜っぽくて。

鳴海の指の間でしろがねの耳朶は見る見る間に赤く熱くなっていった。

「おまえぇ……そんな声出すなよなあ」

慌てて手を引っ込めて怒ったように言う鳴海の顔も真っ赤だ。それが殊更、しろがねを恥ずかしくさせる。

「あっあなたが突然、こんなところを触るから…」

「…もお…いいからまぜろ…」

 

 

黙々と、赤い顔をしたふたりは白い粉を混ぜ続ける。

耳朶、と考えると上手く集中することができなかったしろがねの月見だんごは、少し硬めに仕上がった。 

 

 

 

End

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