謹んで。

鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。

謹んで。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年も後幾日。

 

 

指を折って数えられてしまう年の暮れ。

 

 

 

 

 

 

 

鳴海は寝しなに自分の窓から星空を眺めて

今年もいろんなことがあったなァ

なんてこの一年を振り返ってみる。

 

 

冬は空気が澄んでいるから星座がとてもキレイだ。

 

 

キレイだから、つい、自分のキレイな彼女のことを思い出して

ついついニヤけてしまう。

 

 

今年の重大事件は何か、と訊かれれば文句なしに

「しろがねとくっついたこと」と答えること間違いなしだ。

 

 

もう一生手放すまいと固く誓っている大事な女。

 

 

この先一生、鐘や太鼓で探してももうしろがね以上の女が

自分に靡いてくれることはないだろうし

大体がしろがね以上の女などこの世には存在しないだろう。

 

 

正直、とんでもなく愛している。

 

 

 

 

 

 

 

鳴海は満足そうに一つ大きく息をついて

手の中の一枚の紙っぺらに目をやった。

 

 

白紙の年賀状。

 

 

宛先だけはもう書いてある。

 

 

才賀しろがね様。

 

 

年賀状を書く人が減りつつある昨今

鳴海は「やはり日本人はこれだろう」と

お世話になった人、友人、親戚に律儀に年賀状を書いた。

パソコンで作成、プリンターで印刷、ってのが味気ないと考える鳴海は

毎年墨文字で一枚一枚に一筆啓上。

 

 

「あけましておめでとう　今年もよろしく」

だったり

「あけましておめでとう　また遊ぼうな」

だったり、色々。

 

 

それらはだいぶ前に書き終えて

郵便ポストの口の中に突っ込んである。

 

 

たった一枚を残して。

 

 

たった一枚残ったしろがねへの年賀状

何て書いていいのかが全然分からなくて鳴海は苦悩していた。

 

 

ちなみに去年は「あけましておめでとう　今年もよろしく」だった。

付き合っていなかったし、ケンカばっかりだったし

皆と同じで構わねぇや、と何にも考えていなかった。

 

 

しろがねからの年賀状も例に漏れずにあの汚い字で

何かが書いてあったけれど鳴海には判読できなかった。

おそらく自分と同じ文面だったと思われる。

 

 

だけど今年は違うのだ。

 

 

唯一無二の彼女なのだ。

 

 

だから鳴海は考える。

考えることは苦手だけれど一生懸命頭を捻る。

 

 

去年と同じ文面、

ってのも何にも考えてないように思われそうで嫌だし

他の十把一絡げと大事な彼女を一緒にするのも嫌だし

だからと言って素直に「愛している」とか「好きだ」とか書くのも

他人に見られたらこっ恥ずかしいな

なんて考えていたら何て書いていいのか分からなくなった。

 

 

真っ白なハガキをじーっと眺めて、難しいもんだな

としげしげと黙考する。

 

 

 

 

 

 

キラキラと星が瞬きながら歌っている。

 

 

心機一転、新しい年がやってくる。

 

 

新しい年、オレはしろがねとどうしたい？

 

 

 

 

 

 

 

鳴海は徐に筆を取る。

そしてサラサラと、新年の抱負を書いてみた。

 

 

字も決まった。意外と出来がいい。

 

 

どうせ今から投函したところで元日には届けてもらえないだろうし

何にせよ、鳴海は大晦日から元旦にかけて

しろがねとふたりっきりで過ごすのだ。

何を書いても直接本人に手渡ししてしまえば

恥ずかしいも何もないことに気がついた。

 

 

星にしろがね宛の年賀状をかざす。

 

 

鳴海はその一石二鳥な文面に、にへり、と笑った。

 

 

 

 

 

 

 

あいつは何て返事をしてくれるかな。

 

 

 

 

 

 

 

冬は空気が澄んでいるから星座がとてもキレイだ。

 

 

キレイだから、つい、自分のキレイな彼女のことを思い出して

ついついまたまたニヤけてみた鳴海だった。

 

 

そんな鳴海の瞳の中にも希望の星。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あけましておめでとう

今年は結婚でもしてみるか

 

 

 

 

 

End