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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。

 

 

 

 

 

 

 

『海に行こうよ!』

と言い出したのは、夏休みに入ったばかりの勝。

純粋に、夏、とくれば、海!だから。

 

 

 

『おお、いいねぇ、行こう行こう!』

と大乗り気だったのはサーカスの男性陣。

勿論、鳴海も例に漏れず。

目当てはビーチに眩しい女の娘たちの水着姿。

(特に、しろがね。)

 

 

 

『お坊ちゃまがそう仰るのなら』

『アタシは面白そうだから』

そう返事をしたのはサーカスの女性陣の大人組。

 

 

 

『マサルサンが行くナラ勿論行きマス!』

そう元気よく返事をしたのはリーゼ。

だって彼女は勝のことが大好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高気圧GIRLS。

 

Shirogane ver.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、ふたりとも。水着どうするわけ?」

しろがね、リーゼの肩に両腕をかけて、ふたりの顔の間でヴィルマが内緒話をする。

「水着は去年着たのがあるからそれでいいかと」

「私もデス」

「なあに言ってんのよ、若い娘が!毎年同じ水着を着るっての?信じらんない!」

色気のない返事にヴィルマが呆れたような声をだす。とってもオーバーに。

「マサルもナルミも行くんでしょ?去年も一緒に行ったんでしょうに。それなのに、その時と同じ水着を着て見せるの?

あいつらガッカリしちゃうわよう」

フルフルと大袈裟に首を振る。

「ガッカリ?」

「どうしてデスカ?」

よしよし、エサに食いついたわね、ヴィルマはにいい、と笑う。

 

 

 

「マサルもナルミも男だからね、女の水着姿には興味津々なのよん。それなのに去年と代わり映えしない水着なんて着てってご覧なさいな、興醒めもいいとこ。アンタたちが思っている以上に、アンタたちの水着のラインナップはきっちり記憶しているわよ、奴らは」

「そんなモノなんデスカ?」

そこに非常に都合よく、仲良くおっきいのとちっこいのが通りかかる。

「ハ~イ!マサル!ナルミ!」

ヴィルマが声をかけると、ふたりはぽふぽふとやってきた。

 

 

 

「何だよ、おまえら。女三人でくっついて」

「うふん、ちょっとね。ふたりに訊きたいことがあるんだけど」

「なあに?」

「去年、みんなで海に行った時、しろがねとリーゼはどんな水着を着てたっけ」

「しろがねはフラワープリントのモノトーンのタンキニ」

「水色と白のストライプのスカートのついたワンピースの水着だったよ、リーゼさん」

真顔で即答。

「はい、ありがとさん」

「何なんだよ」

「いーから行った行った!」

おっきいのとちっこいのは、ヴィルマに追いやられてブチブチ言いながら去っていく。

 

 

 

「ね、言った通りでしょう?」

「本当に覚えているんだな…」

「チョットびっくりデス…」

ふたりの素直な反応にヴィルマはしたり顔。

「ね?あの男たちのガッカリした顔なんて見たくないでしょうに、おふたりさん」

「「………」」

 

 

 

リーゼ。

→ 今年中学生になった勝とは告白もまだの清い仲。ヴィルマの見立てでは両想いだけど、パワーバランスはリーゼに寄っている。

しろがね。

→ 半年前に加藤鳴海とようやくカップリング成立。いろんな意味で脂の乗ったいい時期。でもサーカス内では基本的に内緒。知っているのは勝、リーゼ、ヴィルマのみ。

 

 

 

「というわけで、午後から水着を買いに行くわよう。アタシがバッチリ見立ててあげるから安心してよん」

ヴィルマはふたりの背後で魔女のように笑う…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳴「いい天気でよかったなぁ」

勝「ね、やっぱり海に来てよかったでしょ?」

ヒ「ここしばらく海のない県での興行が続いたもんな」

ノ「おう、夏は海だな」

ナ「目の保養にもなるし」

 

 

 

青い海、白い砂浜、眩しい太陽。

そしてその太陽よりも眩しく、美味しそうなバストやヒップが間近を通り過ぎる。

その度に5人の鼻の下は長くなる。

男性陣は先にビーチにやってきて、場所取りと、レジャーマットやパラソルの設営だ。

「なんだ、勝も一端の顔して女の身体見るようになったじゃねぇかよ」

「おまえも健康な中坊だもんなぁ。無理すんなよ、溜めるな」

「何をだよ!もうっ!」

ノリとヒロにからかわれつつも訂正する気はまるでない勝。彼ももう、お年頃の中学生。

逸る心。

待ち遠しいサーカス女性陣(の水着姿)。

何しろ、団員の少ない仲町サーカスではあるけれど、その中の女性団員の質の高さといったら世界的有名大サーカスだって敵わないのだ!

 

 

 

「それにしても遅ぇなぁ」

「女の身支度は長くて困る」

「ああ、早くしろがね、来ないかなぁ…」

ふやけた顔の三馬鹿の横で鳴海の胸中は非常に複雑。

彼らには内緒だが、しろがねは自分の彼女なのだから。

しろがねの水着姿は嬉しいが、他の男の目に曝すのがどうにもこうにも妬けてきて仕方がない。水着すらもつけてないしろがねを自分は幾度となく見ているのだから、いいじゃねぇかと自分を無理やり納得させてみる。

勝は若い男の子だったから、本当に純粋にしろがねであれリーゼであれヴィルマであれ、水着姿は楽しみだった。

 

 

 

「おまたせぇ」

最初にやってきたのはヴィルマ。

レオパード柄の大胆なカットのモノキニにサングラスに真っ赤な唇。

セクシーなのは誰もが認めるところだが、その女王然とした態度とダイナマイトボディは男に威圧感を与える。こんな女に寄って来る男は明らかにMの気があるに違いない。

「喰われそうだな…」

誰かがポツリと呟いた。

その後ろにしろがね。

「「「うひょうっ!」」」

三馬鹿が一斉にしろがねの周りに群がった。勝も、普段見慣れている下着姿とほとんど変わらないのに思わず顔が赤くなる。

そして鳴海は鼻血が出そうになった。

 

 

 

素っ裸だってじっくり見ている関係なのに、水着姿の方がいやらしいってどういうこと?

しろがねが着ていたのは真っ白いビキニ。それって水着?と思いたくなるほどの体表面を覆う布地の少なさ。ブラの三角は極端に小さくてたわわな胸から外れそうだし、首の後ろ、背中、ショーツの左右を結ぶヒモは今にも切れそうなくらいに細い。ショーツだって股上は浅いし、丸い尻の半分以上は仕舞えてないし、切れ込みも深い。しかも素材が薄すぎて、はっきり言って透けている。銀髪で救われているようなもんだ。

透き通るように白い肌に白い水着だと、パッと見、丸裸にも見える。

如何せん、しろがねという女は露出することにまったく抵抗を感じないので鳴海が困ってしまう。

 

 

 

「しろがねに似合うのを探すのに苦労したわよ」

ヴィルマが鳴海の背後に寄って来てヒソリ、と囁く。

「ヴィルマ、やっぱりてめぇの差し金か!」

鳴海はギッと女豹を睨むと、サングラス越しのニヤニヤ笑いと目が合った。

「嬉しいでしょ?」

「そりゃまぁ嬉しい…って、違う!何だよ、アレ?下着じゃねぇのか?」

「いやあねぇ。れっきとした水着よう。ちゃんとしたお店で買ってきたもの」

「おまえの『ちゃんとした』ってのはちっともアテになんねぇんだよ!胡っ散臭ぇアダルトショップであいつに買わせたんじゃねぇの?」

「いいじゃない!皆大喜びだし」

鳴海はヴィルマが顎をしゃくる方向に目を遣ると、そこには三馬鹿に纏わりつかれ、その周りに二重三重の男の人垣にまかれている可愛い自分の彼女の姿があった。

 

 

 

「いいよ!しろがね!すごいいい!」

「とても似合うよ!ナイスセレクト!」

「よし!今すぐ、海に入って波に巻かれてみよう!」

自分以外の男の腕がしろがねの背中に回り、自分以外の男の手が彼女の肌に触れ、自分以外の男の視線が

彼女の身体のラインを舐め回す。

 

 

 

「ほうらね。評判いいじゃないの」

「~~~~~しろがねっ!!!」

鳴海が人垣を掻き分け掻き分け、ズンズンとものすごい剣幕で近づいてきたので、しろがねは少し怖くなった。

どうしよう?

ヴィルマがこの水着だったら絶対にナルミは喜ぶと言うから、そのアドバイスに従ったのに。

ナルミは何をこんなに怒った顔をしているの?コレ、気に入らなかったのだろうか?

「ナ、ナルミ…」

おどおどとした表情を自分に向けるしろがねの前にピタリ、と立ち止まると、鳴海は着ている自分のTシャツをガバッと脱いでその大きなTシャツに銀色の頭を突っ込ませた。丈の長いTシャツはしろがねのバストもヒップもすっぽりと隠す。

辺り一面から巻き起こる、非難と抗議の嵐。

「ああっ!何すんだよ、鳴海!」

「これじゃ、折角のしろがねの横乳が…いやさ、水着姿が…」

「こんなん着てたらしろがねの三角地帯が拝めな……てか、しろがねが動きづらいだろ?」

 

 

 

詰め寄るノリ・ヒロ・ナオタに鳴海はぶすっとした表情を崩すことなく、

「ここで宣言するっス!黙ってましたがオレとしろがねは半年前から付き合ってますんで今後はそのように一つよろしく!」

と大声を吐き出した。

3人の目が点になる。

「「「はああああ?!」」」

「行くぞ、しろがね!」

「はっ、はいっ!」

しろがねは頬を真っ赤に染めてサーカスの面々にペコリ、と頭を下げると、またも人垣を分け分けどこやらへと行こうとする鳴海をとてとてと追いかける。

「ええ?マジなの?」

三馬鹿から魂が抜ける。口から何かが出てる。

「あ~あ、とうとう我慢しきれずに言っちゃった、ナルミ兄ちゃん」

勝は気の毒そうな視線を、骸になってしまった3人の男たちに向ける。

「いいのよう、これくらいしないと大っぴらに公言できないんだから、あの脳筋は」

ヴィルマはしてやったりとニヤニヤ顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙って大股で砂浜を歩き続ける鳴海の数歩後ろを、大きすぎて不恰好なTシャツをはおったしろがねが懸命についていく。鳴海があんまりにも不機嫌そうだから、しろがねは声をかけるのも何だか空恐ろしくて、だからその後を黙ってついていった。何分も歩いて、海水浴場も端っこの、人気もだいぶ少なくなってきた辺りでようやく鳴海の足がゆっくりになった。

 

 

 

「ナ、ナルミ…」

しろがねは恐る恐る名前を呼ぶ。

「あの…」

「おまえさあ、オレに見っとも無ぇヤキモチを妬かせるなよなぁ」

鳴海は背中を向けたまま頭をガリガリと掻く。

「はい?」

「何なんだよ、その水着?」

「あ…、やっぱりこの水着似合ってなかった?ヴィルマに薦められるまま選んだのが良くなかったのね…。ナルミはきっと喜ぶって言われたものだから」

何だかしろがねの声色がしゅんと萎れている。

鳴海は別に、しろがねに文句があるわけじゃないから、しろがねの元気をなくすのは本意ではない。

「分かってら!それに、ヴィルマは正しいんだよ」

「?」

「だからもう、その水着は着るな。オレとふたりきりの時だけにしとけ。他の男の前で、惜しげもなくそんなカッコすんなよ」

「ナルミ」

「ああもお、海に入るぞ!」

 

 

 

ザブザブと海に突入する鳴海の顔が不自然に赤くて、しろがねはくすっと笑った。

「顔が赤いわよ?」

「日に焼けたんだよ」

「もう?」

「うっせぇなぁ」

「ここならTシャツ、脱いでもいい?」

「…ああ」

しろがねは鳴海の腕にしがみついて、自分の足では立てないところにまで連れて行ってもらう。

 

 

 

「皆の前で宣言してくれて嬉しかった、付き合ってるって」

鳴海は冷たい海に浸かって、赤い顔もヤキモチでカッカしていた脳ミソもすっかり冷えたようだ。

「悪かった。四六時中一緒だから気まずくならないように、って言わないことにしてたのにな」

「ううん、いいの」

「だってよー…皆してしろがねに群れやがってよー…オレのなのに…」

鳴海は波の下で大胆な水着を手でなぞる。

「おまえは元々きれいなんだから、それ以上他のヤツラの前できれいになろうとせんで良し!」

「あなたの前で、のつもりだったのだけど」

しろがねは鳴海に軽いキスをした。

「海水でしょっぱいわね」

鳴海の唇も自分の唇も塩味がする。

「じゃあ、中和しよう」

鳴海はしろがねをぎゅっと抱え上げると唇を重ね、その舌を絡めとる。お互いの唾液で海の味を薄くする。

「んっ…」

しろがねの身体が鳴海の腕の中で魚のように跳ねた。

「ほらな。こんなに簡単に脱げちまう水着って、危険だろ?」

「も、もうっ」

 

 

 

しろがねはその後、鳴海に可愛がられながら眩しい太陽の下、誰にも邪魔されない、甘いふたりだけの世界に浸った。

 

 


 

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