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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。

 

 

 

He laughs best who laughs last!

 

 

 

 

 

 

a flower in the ice pillar.  (後)

 

 

 

 

 

 

思い立ったら吉日。

まずは当たりをつけて相手の出方をみてみよう。

 

 

 

鳴海はソファを少し後ろへ押し下げると、ソファとしろがねとの間にできたスペースにどかりと座り込んだ。

そして手をしろがねの正面で組む。

鳴海の長い腕で囲い込まれる形となったしろがねはびっくりして身体を強張らせたがすぐにその身体は柔らかくなり、鳴海の広くて厚い胸に全身を預けた。

鳴海にしろがねの安心しきった全体重がかかる。

あまりにも自然にしろがねがこの体勢を受け容れたので、むしろ仕掛けた本人が驚いていた。

 

 

 

これはOKなのか?

考え無しに行動したものの、我ながら性急すぎたかと思ったのに。

それなら。

鳴海はしろがねの身体に回す腕の半径を狭めてやさしく抱き締めてみた。

しろがねの身体は華奢で、ほんの少し力を入れただけでも壊れてしまいそうだ。

しろがねは変わらず鳴海に身を委ねている。

しろがねはオレに抱き締められてもイヤじゃないのか?

それなら。

鳴海は抱き締める腕に更に熱を込め、ひんやりした銀色の髪に自分の頬を押し当ててみた。

これもOK。

何だかオレって、球審がどこまでストライクゾーンと判断してくれるかを確かめるためにあちこち際どいコースにボールを投げるピッチャーみたいだな、と鳴海は思った。

さて、これからどうしよう。

鳴海が攻めあぐねていると、しろがねが突然口を開いた。

 

 

 

 

 

「カトウ……」

いったいあなたは何をしているのだ?と言われるのかと思いきや、

「今、思い出したんだが……花火のときに話途中になっていたことで訊きたいことがある」

と何の脈略もないことだった。

こいつ、何の疑問も抱かねぇのかな?ホント、何考えてるんだろ?

「あなたは何で『馬乗り』をするなと言ったのだ?」

んな?!何で今頃そんな話を蒸し返す?

しろがねは振り返って近距離から鳴海をまじまじと見つめている。

あーえーうー。

答えに窮している鳴海を、しろがねは更に畳み込む。

「あなたは『オレがイヤ』だと言った。何故イヤなのだ?」

「イヤなもんはイヤなんだよ」

「だからどうして?」

気になるだろう?しろがねは言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、鳴海が自分を「女扱い」していることにしろがねは気づいていた。

鈍いは鈍いが、かつてほど鈍感すぎることのなくなった鳴海は過保護なくらいしろがねに気をかけしろがねの女としての自尊心を満足させるようなことを(無意識のうちに)平気で言ってくる。

時々、ヤキモチらしきものを妬いているのもなんとなく、そしてくすぐったく感じていた。

これでも鳴海はしろがねのことを好きだと気づく前と同じように振舞っているつもりなのだが、如何せん腹芸のできる人間ではない。しろがねが、これはどういった変化が鳴海の中で起きているのかと常々思っていたそんなとき、鳴海が彼女のことを抱き締めてきた。

嬉しかった。

鳴海の腕にすっぽりと包まれて、温かくて、とても幸せで。

 

 

 

 

 

だからこそ、鳴海の口から直接、聞きたい言葉があった。

 

 

 

 

 

「あなたは『他の誰ともやるな』と言った。ならば、あなたにはいいのか?それは何故だ?」

しろがねは攻撃を緩めない。

鳴海は徐々に自分の陣地が削られていくのを感じた。舌戦でしろがねに勝てるわけもない。

「おまえ……そんな前の話の、細かい言い回しまでよく覚えてんなぁ……」

「話を逸らすな」

「そんなこと言っても、おまえが他のヤツとそーゆーコトするって考えるだけでもオレは腸が煮えくり返るんだからしょーがねーだろ?」

「どうして煮えくり返る?」

しろがねの瞳が細くなる。

「それは…」

「言ってくれ。頼むから」

鳴海の頬にしろがねの白い手が触れる。

「言ったら……オレはもうおまえに人畜無害でいられねぇぞ?それでもいいのか?」

「かまわない。だから、言ってくれ」

しろがねは鳴海の身体に自分の体重を乗せた。

 

 

 

おまえのことが好きだからだ。

 

 

 

答えの最後は重なったしろがねの唇の中に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷の中の花は自らすすんで凍てつく閉ざされた世界に入りたかったのだろうか?

本当は、自分を愛でてくれる温かい誰かの手を待っていたんじゃないだろうか?

硬くて冷たくて厚い氷を溶かすには、ただ温もりがあればよかった。

 

 

 

 

外の世界はちっとも怖かない。

どんなに大きな氷でも、おまえのためならいくらでも温めて、壊してやる。

オレが守って愛して、ずっと大事にしてやるから。

 

 

 

 

 

しろがねは心の底から幸せそうに微笑んで、汗ばんだ鳴海の胸に頬を摺り寄せた。

 

 

 

End

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