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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。






Baby Baby
~新米パパママ編~





「ただいまあ」
鳴海が玄関に入ると奥からしろがねの「お帰りなさ―い」の声と元気な赤ん坊の泣き声。
「お?ハラ空かしてんだなあ」
と、鳴海の頬が緩む。
最近では泣き声で空腹なのかオムツを替えて欲しいのか眠たいのかが分かる。
この泣き声はママのおっぱいを早く吸いたくて吸いたくてたまらない、って声だ。
「しょーがねぇなぁ。ま、ママのおっぱいを吸うのが好きってのは父親譲りだもんな」
笑みがどうしたってこぼれてしまう。
鳴海がリビングに入るまでの間に赤ん坊の泣き声はピタリと止んだ。


「ごめんなさいね、出迎えにいけなくて」
しろがねはソファに腰掛けたまま鳴海を申し訳なさそうに見上げ、鳴海はそんなしろがねにやさしく「ただいま」のキスをした。
「いいって。今のママはこっちの方が大切な仕事だもんな~。ただいま~パパ帰ってきたぞ~」
鳴海はしろがねの胸元で懸命にお乳をんくんくと飲む、丸々と太った可愛い我が子の頬を突いた。
はちきれんばかりの弾力が鳴海の指を押し返す。
小さくて頼りなくて、愛しいピカピカの命。
いくら見ていても鳴海は飽きることがない。
「着替えてきたら?」
「ううん。後でいい」
ネクタイを緩めただけで、これまでだったら帰宅したらすぐに脱いでいた背広姿のままとろけそうな笑顔で我が子を見つめる鳴海に自然としろがねにも笑みが浮かぶ。


「はい、ごちそうさまでした」
しろがねがカエルのようなお腹になった赤ん坊の身体を起こしてゲップをさせようとすると、鳴海は「オレがやる」と手をのばした。
「じゃ、お願いね」
「おう」
鳴海にかかると赤ん坊なんて空気を抱いているようにしか思えない。
柔らかくて、温かい、守るべき者。
鳴海がとんとんと背中を叩くと、小さな口からけふっとゲップが出た。
「ナルミはゲップさせるの上手よね。百発百中」
「だってパパと相性がいいもんなあ」


鳴海の大きな手と、大きな胸に抱えられてゆらゆらと揺すられて、満腹の赤ん坊はあっという間に眠りに落ちた。
幸せなミルクよだれを垂らしながら。
「飲んだら寝る、おまえは世話ねぇなぁ」
「寝かしつけるのも本当に上手」
しろがねはクスクスと笑いながら、鳴海の腕の中に眠る我が子に顔を近づけた。
「あなたの腕の中はとても気持ちがいいもの。パパに抱かれるのが好きなのはママ譲りね」
しろがねがどこかの誰かと同じようなことを言う。


「…オレさあ…この世に、おまえ以外の愛しい者が存在するなんて夢にも思わなかったよ」
「私もよ」
ふたりは視線を絡ませて、ふふっと笑う。
いまだ新婚気分の抜けきれない、子育て新米の鳴海としろがねの小さな小さな宝物もやさしい空気に包まれて、眠りながら微笑を浮かべた。
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