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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。






白銀縁起 2/7





翌、帰京する日の朝、鳴海は前日懸命に掃除をしてすっかりきれいになった社殿の中にしろがねを呼んで
「いきなりで何だけどさ…ここがヤリ部屋にされてる時、しろがねはどうしてんの?」
と訊き辛そうに訊いて来た。
「こんなの訊くの、アレだって分かっちゃいるんだけど…どーしても気になってて…」
心霊スポットに名を挙げられてしまっているしろがねの神社には、到底ロクデナシしか集まらない。丑の刻参りにやってくるか、肝試しにやってくるか。最悪なのは、怖いもの知らずにも程がある、肝試しついでに社殿をラブホ代わりにする連中だ。使用済みコンドームを放り投げて帰って行く。何も知らなかった幼い時代と違い、今の鳴海はそれが何なのか理解できる。自分自身はまだそれを使うような経験をしたことはないけれども、知識はある。
それを始末する度に鳴海は、見ず知らずの男達に不埒な真似をされ姦されているのがしろがねのような気がして、やり切れなくて堪らなかった。


「どう…って」
しろがねは羞恥に頬を染め、言い淀んだ。
山の神は多産の神、ではあるが、しろがね自身は処女だ。穢れのない子供だからこそ人柱となった。子を授ける力があるとしても『子の作り方』は知らなかった。男と女が交わうからと知識で知っていても、どうすることなのかは知らなかった。それを知ったのは神と成ってからだ。
昔、五穀豊穣の祭りが盛大に神社で行われていた頃、若い男女がよく輪を抜け出して木々に紛れて交わっていた。今の世では大っぴらに社殿が使われる。愛し合い、時に姦されても、女達は快楽に喘いだ。その体は淫らな音を立て、猥らな言葉が場に満ちた。
その濡れ場をしろがねは有無を言わさずに見せられた。しろがねにとって、神社を構える一帯は見通しの良い庭であり、ましてや社殿は自室に他ならない。


「クソ…」
鳴海が忌々しそうに呟いた。しろがねは、質問に明確に答えられなかったのがいけなかったのだろうかと
「私が、おまえを怒らせたのか?」
問うと
「違ぇよ」
と抱き締められた。
「そんな顔すんなよ」
初めて見せた恥じらいの表情は、色っぽいの一言だ。苦しいほどの熱が溜まり、衝動を堪えられなくなってしまう。
「何つーか…他のヤツにしろがねがヤられたみてぇで」
嫉妬したのだと、鳴海は言った。
「しろがねは、オレの、オレだけの」
「な、ナルミ…ん、…っ」
噛み付くような荒々しい口付けを貰う。唇の隙間から漏れる鳴海の呼吸は乱れ、両手はしろがねの身体を弄るように忙しなく動く。そして、厚い胸板に添えられたしろがねの手に手を重ねると、ゆっくりと引き下ろして行き、己の股間へと誘導した。布地の下に明らかに硬い肉がある。鳴海の求めに従い、軽く押さえて擦ってやると
「…っあ、くぅ…っ…」
小さな甘い喘ぎ声をこぼした。情欲に潤んだ切ない瞳で見つめられ、しろがねの芯がきゅうと疼く。
「かわいいな、ナルミ」
長めの鬢の毛を梳くと
「抱きてぇ…ダメか…?」
荒げた呼吸に紛らせ、懇願された。


「昨日は我慢に我慢して、キスだけで止めたんだけど」
「きす?」
とは何だと訊ねると、啄むように唇が触れ合い
「コレのことだよ」
とついでとばかりに頬や耳や首筋にキスをされた。
「ああ、私はこれ…好きだ」
「オレ…しろがねが欲しい」
鳴海の言葉にしろがねは心を逸らせながらも戸惑ってしまう。
「…私で、いいのか?醜女だぞ?」
シコメ…の意味が鳴海にはよく分からない。
「言ったろ?オレはしろがねがいい」
「本当におまえは…物好きだな」
しろがねは、ふ、と笑うと
「おまえが欲しいと言うなら与えてやるぞ」
とキスを返した。どちらからともなく腰を下ろす。


「オレ、初めてだから、上手く出来るか、満足させられるか、分かんねぇけど…」
「私も、した事ない。した事ない、が」
しろがねは鳴海の肩を押し、横たわるよう促した。そして、真上からまごつく鳴海を覗き込むと
「私はこれでも多産を司る神だ」
と妖艶に微笑んだ。
鳴海の腰に手を掛け、悪戦苦闘しながらベルトを外し、下着ごとジーンズを引き摺り下ろした。勢い良く跳ね出た男根を直に握ると、鳴海がびくりと身体を震わせ、恥じらいに赤く染まった顔をしろがねに向けた。
「そんな顔をするな」
先程、鳴海から掛けられた言葉を返してやる。亀頭は痛々しい程に張り詰め、鈴口からは滑る樹液が溢れている。藤葛を巻き付かせた古木のような肉幹はビクビクと脈打っている。
何と立派に育ったものだ、と、満足を浮かべた唇を大きく開けると、しろがねは、はく、とそそり立つ男根の突端を咥え込んだ。


「う!」
思わず大声が転び出そうになる。温かく、たっぷりとした唾液に溢れた口腔に包まれる感触に、童貞が狼狽するのは仕方ないことだ。大きく張り出した傘にも裏筋にも、ぬるぬると舌が這い回る。喉奥を突くほど呑み込まれ、程よく吸われながら唇に亀頭まで扱かれる。口に収まりきらない根本には細い指が絡み付き、コリコリと幹を擦る。しろがねが淫らな行為に耽る、しろがねが愛撫する男根は自分のものである、その絵面が射精感を駆り立てる。
「う、わ、もう、ダメだ、しろがねっ……でるっ、で…っ!」
程なく、鈴口の小さな孔に出口を求めた精液が一気に集まった。『早漏』という単語が頭の中に閃き、懸命に堪えたものの呆気なく決壊した。勢いよく噴射するネバネバした液体が男根に纏わり付く、その不快感が、こくん、としろがねが嚥下するごとに消えていく。しろがねは肉樹に苦味を感じなくなるまで舌を這わせながら、肩で息を吐く鳴海に蠱惑的で楽しげな視線を寄越した。
彼女は甚く性的に積極的な女神なのだと、鳴海は喰べられながら実感した。


しろがねの着物の裾が左右に開き、真っ白な太腿が覗く。萎え知らずの肉に新たな血が滾り、先走りの汁が絞り出され、腹へと糸を引いた。しろがねは鳴海の腹に跨ると、男根に自らの秘裂を擦り付けた。ぬるり、と溢れた蜜で滑る。腰を前後に揺らし、裏筋に秘芽を押し当てくちくちと音を立てる。刺激を受ける度に「あ」と妙音が鳴海の鼓膜を撃った。
「しろがね…っ、もう、入りたい…っ」
両手で尻を包み懇願すると、しろがねは唇に弧を描いて腰を浮かせた。亀頭を蜜壺に誘うと、ゆっくりと腰を下ろした。互いに息を呑む。物凄くキツい、が、でも確実に、鳴海がしろがねのナカに埋まって行く。しろがねの身体の重みで沈んで行く。濡れそぼる、黒と銀の陰毛が絡み合い、鳴海の亀頭がしろがねの子宮を捕らえた。しろがねの震慄が、鳴海への締め付けという形で伝わる。


「あ…あ…っ」
鳴海の腹に置かれた細い指が震えながら、日に焼けた肌を掻いた。
新たに滲んだ熱い蜜を潤滑油に、しろがねが腰を揺らす。女性主導で畝る肉筒に抽送されて、鳴海は時なく顎を上げた。しろがねの着物を脱がせようと長い腕を伸ばすと、彼女は鳴海に手伝って貰いながら腕を抜き、胸を開けさせた。
若い鳴海が生まれて初めて目にする、女性の乱れた半裸姿。それなりに、それなりの雑誌や画像で得た知識はあるが、凡そ実物には叶わない。しかも今目の当たりにしているのは女神のそれであり、鳴海がこよなく愛してしまっている女のそれだ。
何て、キレイで、いやらしいんだろ。
眺めているだけで脳が上せ上がる。かてて加えて、鳴海の剛直はしろがねにずっぽりと埋まり、未だかつてない恩恵の内にある。


体の動きに合わせ、想像以上に大きな乳房が揺れる。桜色に上気した膨らみの突端が硬く尖り始めているのが分かる。しろがねの興奮が伝播する。彼女のナカで、鳴海の肉が更に硬く怒張した。下から両の手の平で乳房を掬い、揉み上げると柔らかに、鳴海の思うがままに形を変えた。乳首を緩く捻ると、しろがねは甘やかな悲鳴を上げて、身を弓形にしならせる。それと連動して肉鞘が鳴海を心地よく締め付け、男根全体を快感で包み込む。


「あー…やべぇ…コレ…」
余す所なくしろがねに淫肉に吸いつかれ、己の樹形を再認識する。壁に刻まれた襞の一本一本、天井に鏤められた凹凸と一粒一粒が知覚出来る。感覚が研ぎ澄まされて行くのが分かる。しろがねが鳴海の上で踊り、繋がりが膣口から子宮口まで往復する度に
、刀が熱い内に打たれ砥石で研磨されるようなイメージが強くなる。
一度すでに吐き出したばかりで、またも射精感を懸命に堪えている。しろがねを相手に長持ちなんか出来るワケがない。なのに、もう随分と長くしろがねの猛攻に耐えているような気もする。
ふと前にしろがねが、神の世界では時間が止まったようにゆっくりと流れると言っていたことを思い出す。現世に身体を置きながら、しろがねと繋がることで共有している性感帯だけが神の悠久の時の流れに取り置かれているのかもしれない。


しろがねの腰を引き寄せ、下から突き上げると
「あ、あ、いけない…ナルミ…っ」
上体を立てていられなくなったしろがねが肘を折り、鳴海の胸元に倒れ込んだ。
「…陰が熱く、て…力が、入らな… く…」
「すげぇ、気持ち、いい、しろがね…」
「気持ち…?」
「ハラワタが、とけちまう…」
そうか、これが、キモチイイ、なのか…
ここを訪れる者達がよく発していた言葉だ。長らく意味不明だったけれど、ようやく身をもって学べた。全身が陰部になったかのような錯覚に囚われて、理性は快楽に溶けて埋没する。
「し、ろがねっ、もうっ、もたねぇ…っ」
ああ、ナルミ、私に、おまえの精をくれ…
鳴海の腰の突き上げが速く、強くなる。しろがねの頭の中が真っ白になった。
「だすっ…ぞっ…ああ…っ!」
共に果てる。しろがねの奥底に鳴海の精液が放たれた。どんな稽古でもこんなに呼吸が乱れたことなんてない。しろがねに己を埋めたまま、鳴海は細い身体をぎゅうと抱き締めた。細腰に残る帯の結び目を力任せに解き、脱がせた着物を敷布団代わりにして、腹の上のしろがねを横たわらせた。上下入れ替わり、しろがねの姿態を見下ろす。硬いままの男根を引き抜くと、膣口から精液がコポリと逆流して溢れた。白濁したそれに混じる破瓜の証。


「女神様を傷モノにしちまった…オレは天罰喰らうのかな…」
「何を言っている。そんなものは当てないぞ」
くったりと脱力しながら、溜息交じりに気怠い返事が返る。
「愛されて罰を当てるものか。罰とは神との契約を反故にした時に当たるものだ」
「しろがね…何だか光ってる…」
しろがねの白玉の肌がおぼろに発光していた。
「おまえに精を注いで貰ったから。幾らか力が戻ったようだ」
「何だ、セックスするとしろがねって元気になるの?」
「山の女神は男の精を吸う、と言われるからな」
「だったらオレ、もっと」
「帰りの電車とやらがあるのだろう?お爺さんが待っているぞ」
「も一回するくれぇは時間ある」
「足腰、立たなくなるぞ?」
「大丈夫。伊達に鍛錬してねーからどってことねーよ」
「忠告はした。知らないからな」
しろがねが苦笑う。
「しろがね、愛してる」
「ナルミ」
「オレは、しろがねがいればそれでいい」
鳴海はTシャツを脱ぎ捨てると、今度は自分からしろがねに己を埋めた。そうして時間が許す限り、ハラワタがぐちゃぐちゃに溶けるまで徹底的に愛した。










雨足は多少弱くなったものの、地面を穿つ雨垂れは高く水飛沫を跳ね上げている。仕事再開にはまだまだ時間が掛かりそうだった。


「本当に足腰立たなくて。記憶が消えてるから何でこんなに草臥れてるのが分かんなくて。ホウホウノテイで帰京したんすよね」
黒髪の若い職人が、はあ、と煙草の煙を大きく吐き出して言った。
「何だよ。おまえの筆下ろしの相手は女神様だっての?」
「その年は、近年稀に見る大豊作だったそうっす」
「まぁたまた。おまえって見かけに寄らず、妄想力長けてんな」
明るい髪色の若い職人が茶化す。
「よく出来た話だろ?そう言われるの分かってっから、話さなかったんだよ」
鳴海は苦笑する。


「神社を出たら忘れるって設定、どこに行った?何でおまえ覚えてんのよ」
「千羽鶴、折り上げたのか?」
「正解っす。ま、だいぶ後になりますけどね」
いつの間にか、鳴海の手の平には小さな折り鶴があった。話をしながら、ポケットの中に見つけたレシートで折っていたらしい。
「あー、確かにおまえって鶴よく折ってるわ」
「何かもう、クセで」
鳴海は鶴の尾を摘むと、クルクルと回るそれを懐かしそうに見つめた。


「何次元…2.5次元?」
「高次過ぎて話にならん」
「で?山の神さんとはどうなったんだ?」
の質問に、鳴海は困ったように眉根を寄せた。
「実のところ……次の年から、逢えなくなっちまってさ」
「何でだよ?ラブラブなフラグ立ちまくりじゃん」
「ほら、表に出ると記憶がなくなるワケで」
「うん」
「カノジョを作っちまったんだよな、オレ」
「あー…やっちまったな」と異口同音が飛んだ。
「でも、それは仕方なくね?女神さんのことを忘れてんだから。高校生ならヤリたい盛りだろ」
「そう…なんだけど」
「山の女神は嫉妬深いって言うからなぁ」


年嵩の職人の言葉に頭を掻く。
「嫉妬…ていうか、傷つけたんですよ。オレが」
嫉妬は愛情の裏返し、嫉妬が深いならば愛も深い。無意識下でしろがねを想いながら他に恋人を作ったのは、単に性欲に負けてしまったからだ。
偏に、自分が情けなかっただけの話だ。
鳴海は今だ強い雨を降らせる灰色の雲と、トタン屋根を伝う雨垂れを見上げた。



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