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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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鳴海の軽井沢生還ベースのパラレルです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しろがねでいっぱいの

 

 

加藤鳴海の4日間。

 

 

その5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日は朝からとても穏やかで、鳴海はしろがねと過ごす時間を純粋に楽しんだ。しろがねにくっつかれることにもすっかり慣れ、傍にいないほうが不確かな感じがするくらいだった。

一緒に食事を作ったり、後片付けをしたり、庭に水を撒いたり、散歩をしたり、そんな当たり前の日常の風景にしろがねがいる。

朝起きるとき、夜寝るとき、自分の腕の中に当然のようにしろがねがいる。

鳴海はこんなふうにふたりで暮らしていくのもいいかも、と思うようになっていた。

正確には、暮らしたい、と思うようになっていた。

まだ、しろがねの記憶も言葉も戻らないけれど、いつ戻るかも分からないけれど、

何よりお互いがお互いを必要としていることが歴然としているし、このしろがねもしろがねなので、「このまま一緒になっちまおうか」なんて鳴海は(わりと真面目に)考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

明日は仲町サーカスが帰ってくる日。

こうして並んで寝るのも(鳴海の中ではとりあえず、だが)最後だ。何とも名残惜しい。初日にあんなに大騒ぎしたのが嘘みたいに今夜はとても落ち着いていた。

しろがねは相変わらずきれいな微笑みを浮かべて鳴海を近くから見つめている。

鳴海はしろがねの髪をやさしく撫でる。

「もし……おまえがこのままで、サーカスやってくのが難しいって話になったら、オレんとこ来いな。オレがおまえの面倒みてやるから。勝も連れてきていいからよ。オレがそっくり、おまえをもらってやる」

オレ、おまえのことが好きだから。

そう小さく付け足すと、鳴海は照れ隠しに「おやすみっ」と言って、瞼を閉じた。

 

 

 

その、閉じた鳴海の瞼にしろがねの細い指が触れる。

指は鳴海の頬を撫で、唇をなぞった。

「おい、くすぐってぇだろが」

再び、目を開けた鳴海の顔をしろがねの白い手が挟む。

鳴海の瞳に映るしろがねは、何かを訴えているようで、瞳が潤んでいるようで、その唇は誘うように半ば開いていて。

鳴海は吸い寄せられるように顔を近づけていったけれど、しろがねは逃げないどころか首を傾けて鳴海を求めてきたので躊躇うことなくしろがねの唇に自分の唇を重ねてみた。

ひんやりとして柔らかい。

鳴海は後ろ髪を引かれながらも唇を離す。

「今日はもう、こんだけな。そうでないとのっぴきならなくなっちまう」

 

 

 

そう言ってまた瞼を閉じる鳴海に対し、しろがねは何を思ったか、おもむろに起き上がると鳴海に借りているパジャマ代わりのTシャツをがばっと脱いだ。

その下には、ヴィルマの用意した例のやる気いっぱいのキャミソール。

「なんでそんなもん着てんだよ…」

呆然とする鳴海の身体にしどけない姿のしろがねが身を摺り寄せる。

そして今度はしろがねの方から鳴海にキスをした。

「おまえ…そんなに…」

オレに抱かれたいのか?

しろがねにここまでさせて、何もしないのはかえってしろがねに恥をかかせることになる。男としても恥だろう?

こんな理屈をつけてもつけなくても、もう我慢できなかった。

鳴海はしろがねの身体に乗り上げると、今度はもっと長く深いキスをした。

しろがねは腕を鳴海の背中に回し、鳴海の愛撫に切なげに息を漏らし、身体を捩る。

「しろがね……オレ、おまえを大事にするから……」

 

 

 

この晩が、鳴海にとって3日間で最も長い夜になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、起きると、しろがねは見たことのあるようなないような天井を見上げていた。

何日も何日も眠っていたような気がして、頭がぼうっとしている。

身体も何だか気だるい。

でも、ここは、すごく温かくて心地いい。

身体の上に乗る重みもとても幸せな気分にさせる。

トロトロとした目を何気なく横に向けると、そこにはどうしてか鳴海が眠っている。

「カトウ……」

そこに鳴海がいることを別段、不思議なこととも思わない。

ああ、この重みはカトウの腕のものか。

瞼がまたくっつこうとしている。

まだ眠い。

もう少し眠ろう。

寝……。

 

 

…………。

 

 

 

 

寝?!

 

 

 

 

ぱちっ、とこれ以上は開かないくらい大きく目を丸くして、自分の隣で眠りこける男の顔をまじまじと見つめる。

紛れもない、カトウナルミだ。

もう一度、天井に目をやると、それは鳴海の部屋の天井だということに気がついた。

何で私はカトウの部屋で、カトウと同じ布団に寝て、カトウの腕を枕にして寝ているわけ?

唖然とするしろがねが続いて気づいたことは、自分が裸で何も身につけていない、ということだった。

そろり、と布団をめくって、慌てて布団を元に戻し、赤い顔で天井を凝視する。

何てこと!カトウも裸ではないか!

心臓の鼓動は激しくなり、身体全体をガタガタと揺らしているかのようで、しろがねは落ち着こうと躍起になった。

そろそろと自分の身体に触れてみると、確かに情事の跡がある。

身体がかあっと火照り、しろがねは赤い顔を両手で押さえた。

自分は鳴海に抱かれた、その現実にしろがねはいまだかつてないくらい動揺し、途方もなく混乱した。

私(とカトウ)に何があったのだ?

どうしてそうなったのか、記憶がまるでない。

しろがねは懸命に懸命に記憶を手繰り寄せた。

そうだ、テント裏で道具をひっくり返して…咄嗟に腕で庇ったけれど間に合わなくて…額に激痛を感じた後は……何も分からなくなった。

その後は記憶が空白。今、目覚めるまでがすっかり抜け落ちている。

やはり、その後、何がどうして今こういう状態にあるのかがまるで分からない。

大体、あれからどれだけの時間が経っているのだろう?

 

 

 

私はカトウに抱かれたのか?

嫌じゃない。

むしろそれは嬉しいくらいだ。

私はずっとこうなることを望んでいたのだから。

だけど、私は「そうなった過程」をまるで覚えていない。

だって、私の知る限り、カトウは少しも私の気持ちに気づいてくれてなくて、私をどう思っているのか少しも分からなくて、私をずっとイライラさせていたのに。

それがどうして「こういう」関係になったのだ?

しろがねの指に何やら紐のようなものが引っ掛かった。

布団の中から引っ張り出してみると、それは思わず絶句してしまうようなキャミソール。

「な、何なのだ、これは…?まさか私がこれを着…?」

それはそうだ。鳴海が着るわけもない。

しろがねは鳴海を今すぐにでも叩き起こして事情を説明させたかったけれど、鳴海とどういう顔をして話をすればいいのか皆目分からず、ただ時間だけがいたずらに過ぎていった。

そのうちに鳴海の眠りが浅くなり、う・うーんと伸びをしたので、心臓がばくんと破裂したしろがねは慌ててくるりと鳴海に背を向けた。

どうしよう。私はどうしたらいいのだろう?

 

 

 

「しろがね、起きたのか?」

鳴海は夜通し愛したしろがねの内側の変化にまだ気づいていないので、何事もなく、その長い腕でしろがねの身体をやさしく抱き締め、彼女の白く滑らかな首筋に唇を寄せた。

「っ!」

しろがねの全身に甘い痺れが走る。

鳴海の大きな手の平がしろがねの乳房を包み、ゆっくりと揉みしだいてゆく。

「は…っあ…」

しろがねは鳴海の行動に驚くよりも身体が感じてしまう。自然に身が捩れていく。鳴海は自分の愛撫に敏感に応えるしろがねの身体に、起き抜けにもかかわらず、その行為に熱をこめる。

しろがねは堪らず彼の名前を呼んだ。

「カ、カトウ…」

名前を呼ばれて、鳴海の手が止まった。

「しろがね?話せるようになったのか?」

ということは、私は話せなかったのか…?

しろがねは空白の時間の情報をひとつ手に入れた、が、それではこの状況を説明できない。

鳴海の愛撫に図らずも快感を覚えてしまい、このまま流されていってしまいそうな状況を。

どうすればいい?記憶が戻ったことを告げないといけない。

でも、その後、カトウとどう接すればいい?

時間が欲しい!もっとじっくり考える時間が!

 

 

 

しかし、鳴海は少しも待ってくれない。

「記憶は?記憶は戻ったのか?」

しろがねは首を横に振った。時間を稼ぎたかったのだ。

鳴海はしろがねの背後で「…そっか…」と小さく呟くと、

逞しくて温かい両腕でよりしっかりとやさしく、しろがねを包み込むように抱き締めた。

考えなければ。

頭では分かっているのに、あまりにも鳴海の腕の中にいることが心地よくて、しかも密着度が上がったことで自分の腰に何か硬いモノがあたり、それの正体に思い当たるにつれ、しろがねは落ち着いて考えることなどできなくなっていった。

混乱につぐ混乱。

「昨日はすまねぇな、おまえは初めてだったのに、あんまり…その、気持ちよかったから」

聞き慣れた鳴海の声が、聞き慣れない言葉を紡ぐ。

「おまえ、とてもきれいだった」

しろがねは恥ずかしくて本当に顔から火が噴きそうだ。

鳴海の手がしろがねの内股に伸びる。

鳴海はしろがねにくちづけようと、反対の手でしろがねの頬に触れ、自分の方に顔を向けさせようとした。

 

 

 

しろがねは。

考えのまとまらない彼女の頭の混乱はついにピークに達し、

そんな彼女は反射的にむんずと掴んだ枕で思い切り、

力任せに鳴海の横っ面を張り倒し、

風よりも早く鳴海の部屋を飛び出したのだった。

 

 

 

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