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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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原作にそったパロディです。

 

 

 

 

(舞台はとある駅前に大きなテントを構えるストローサーカス。

そのテントの裏。ほんの日常の、些細なひとコマ)

 

 

 

 

 

 

開幕前のからくりサーカス。

 

 

 

 

 

 

(舞台右袖からクマの着ぐるみに入った大男、登場。

肩で息をついて苦しい様子)

 

 

男は不治の病に冒されていた。

他人を笑わせないと死んでしまう忌まわしい病。

今、その発作が男を苦しめている。

 

早いとこ表に出て誰かを笑わせねぇと死んじまう!

 

ただでさえ狭い視界、それがどんどん歪んでくる。

男はただひたすらに駅前の広場を目指すため

テント裏をふらふらと進む。

誰が前から来るかなんて気にかけてもいられない。

 

 

 

 

(舞台左袖から銀目銀髪、華やかな衣装の美しい女、登場。

このサーカスの団長の息子にまとわりつかれ

いささか辟易した様子)

 

 

女は笑うことを知らなかった。

ただ、自分に与えられた使命を全うする日を

心待ちにしていた。

 

私は私。他人などどうでもいい。

 

氷のように冷たく、微笑むことができない女。

自分が人形であるという観念に縛られて

ひとりで生きる寂しい女。

前から誰が来ようがそんなことは女には全く関係ない。

 

 

 

 

テント裏でサーカスの花形スターとアルバイトがすれ違った。

サーカスではごくありふれた、日常のひとコマ。

少しも珍しくないありふれた光景。

 

 

 

(すれ違って、ふたりはまた遠ざかっていった。)

 

 

 

 

数日後、運命の歯車が回り出すことも知らずに。

 

 

 

でも今、それが、

お互いの運命の相手だと、

どうして知ることができようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まもなく、開幕のベルが鳴る。

 

 

 

End

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