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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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舞台設定、人物設定、その他もろもろ完全創作です。






Can you celebrate?

a sequel to the story of "inochi mijikashi koiseyo masurao!".

part 3-1. their wedding bed.







「終了!終了!長ぇ一日だったなァ!」
鳴海は両手いっぱいの花束やらプレゼントやらをとりあえずテーブルの上に無造作に置くと、手足を目一杯伸ばして大きなベッドの上にひっくり返った。ベッドルームにはクイーンサイズのベッドが仲良く2つくっつけて並べてあるのだが、鳴海の身体だとそれが普通に見えてしまうのが不思議だ。
「お疲れ様、ナルミ」
しろがねは髪飾りのピンを抜きながら鳴海に労いの言葉をかける。
「私、先にシャワー使ってもいい?二次会で変な汗をかいてしまって何だか気持ちが悪いの」
しろがねは困ったように笑った。
「あんな暴露話だされりゃあ冷や汗もかくよなァ。全く、へーまの奴……ま、オレたちも見られてもいい覚悟はあったけどな」
「それは…そうだけれど」
誰に見られてもいいから抱いて欲しいと一番最初に言ったのはしろがねだ。だけれどそれは絶対に皆正体不明に酔い潰れてて、覗かれるはずがない、という思い込みの上に成り立っていたのだ。誰かが途中でトイレに起きることも、喉が乾いて起きることもあっただろうに、我ながら何て大胆だったのだろうと今更ながらに顔から火が出てしまう。


「でも、それを皆の前で言わなくてもいいじゃない?」
もしかしたら今日の今日まで勝と平馬が黙っていてくれたことの方が奇跡のような気もするけれど。
「今日来なかったヤツらにもあっという間に知れ渡るな。いい話のサカナだぜ」
鳴海はキシシと笑っている。逆の立場だったらあっちこっちに話を散らしていること、請け合いだ。
「ああ、もう……何でそんなに笑っていられるの?私なんかこれから友達にどんな顔して会えばいいのか分からないわ」
「開き直っちまえって。事実なんだし」
「もう…」
しろがねは呆れたように首を振る。そして花束が山積みになったテーブルに目が止まり、その前にやって来た。
「な。皆もこんなに祝福してくれたんだからさ。愛嬌愛嬌」
と、鳴海も後ろからやってくる。長い腕をしろがねの身体に回し、柔らかい髪にくちづけをする。
「ふふ。そうね」
鳴海の腕に手を添えて厚い胸に寄りかかるとこの幸せの前ではどんなことも些細に思えてくる。
あんなに風俗ネタで悩んだことすらも。
「持って帰るのが大変ね、これ」
「そうだなァ。おし。プレゼント、何をもらったのか見てみよう」
鳴海としろがねはガサガサと包みを解く。出てくるのはペアの食器類、タオル、ちょっと洒落たフォトスタンド。新居にお揃いのものが増えるのは何だか嬉しいけれどくすぐったい。最後に残るはひとつ。


「これは何?何だか嵩張るものみたい」
しかもラッピングも特にされていない。はっきり言って見た目ではプレゼントには見えない。普通に買ってきたモノを普通にくれた、という感じ。
「これは……部の奴らがくれたのだ。『披露宴では迷惑をかけたな。お詫びに急いで買ってきた。これでカミさんと仲直りしてくれ』って渡された」
「仲直りできるもの?何かしら?」
「厳選した、っつってたぜ?」
鳴海が品物に封をするセロハンテープを大雑把に剥がし、中から手を突っ込んで取り出したものにしろがねは眉根を寄せて、小首を傾げた。
「……耳?」
白い猫耳型のカチューシャ。
「どう考えてもオレのサイズじゃねぇよなァ…おまえの頭、だな」
鳴海はカチューシャの両柄をクニクニと動かしてみた後、えい、としろがねにそれを装着してみた。
猫耳美女の出来上がり。
「何だか子どものつけるオモチャみたいじゃない?何でこんなもので仲直りになるのかしら、ねぇ?……ナルミ?どうかしたの?ナルミ?」


鳴海の返事どころか言動そのものがなくなってしまったのでしろがねがどうかしたのか、と顔を上げるとそこにはやたらと瞳をキラキラさせている夫の姿があった。鼻の下が伸びきって、小鼻が膨らんで何やら押さえきれない興奮を何とか押さえ込もうとしている模様。鼻息も荒い。
「な…何?」
「かっ、可愛い…っ!それいい!」
という言葉と一緒にヨダレも垂れた。
おおう、やべえ、コウフンしちまった、と鳴海は口元を服の袖で拭う。何だか鳴海にそんな風に言われると自分の格好がどうしようもなく恥ずかしくなってしまって、しろがねは慌てて頭の上の飾り物を撤去した。
「な、何で取んだよ」
チャイニーズ風猫娘が目の前からいなくなってしまったことに鳴海は不満の声を漏らす。
「だって…!恥ずかしいのだものっ」
「似合ってたのに」
「いいの!」
鳴海はすごく残念そうな顔になった。下唇を突き出して拗ねた顔になっている。
「いいからッ!他には何が入ってるの?」


話を逸らすためにそう催促したものの、普通のモノはきっと入っていないに違いない、しろがねはそう直感した。ああ、むしろその袋はそのまんま中身を見ないで封印した方がいいかも…。
続いて袋の中から現れたのは白い着物だった。赤い襦袢、白い着脱の簡単な作りの帯。
「な…?」
しろがねは絶句する。
「おお、これは…女物、だな?」
鳴海の瞳が更に輝き出す。着てくれないかな~と書いてある。しろがねは思わず目を逸らした。
「他には?まだ何か色々入ってるぞ?」
鳴海は袋を逆さまにして振った。バラバラと小物が降ってくる。
足袋、手錠、縄、蝋燭、そして様々な大人のオモチャと、友人たちからの励ましの手紙。
『今夜は夜通し楽しんでくれ』
「あいつら……いい奴らだな……やっぱ」
友情に感動する鳴海の右手には黒いバイブレーター、左手にはピンクのローター。絵的にしろがねは引かざるを得ない。
「どこがよ!嫌よ、私は!」
全部私が使用する(?)モノばかりじゃないの?
このラインナップを贈る友人も友人なら、これに興奮しているナルミもナルミだ!


「確かにこれらを厳選、ってのには問題があるなァ」
「当たり前でしょ?」
「あいつら、これをおまえが使ってる姿を想像しながら買ったってことだろ?人の女でそんなことを考えながら買うってのは由々しき問題じゃねぇのか?」
「問題はそこじゃないでしょう?」
しろがねは眉尻を上げる。
「いや、ほら、SMグッズはともかくとしてもさ、こっちの着物と猫耳くらいは……イインジャナイカ?」
キラン。
と瞳も歯も光ってる。
何ていい笑顔だろう?それともイイ笑顔?
こんなナルミの笑顔をこれまでに見たことあっただろうか?
いや、ない。
しろがねはわたわたとその場を離れる。
「やだってば!」
「ちょっと着てみてくれるだけでいいんだって」
「や。私がシャワー浴びて出てくるまでに皆これ片付けておいて」
「なあ、しろがねったら」
「ダメったらダメ!」
しろがねはバタバタとシャワールームに飛び込んで、話を強制終了させた。





しろがねがシャワーを浴び終えて戻ってくると、言われた通りに片付けはしたものの猫耳と和装に未練を残した鳴海がしつこかったので
「ナルミもシャワー浴びてきなさい!今日は私に注文つけられる立場じゃないでしょ!」
とピシリと言ったら鳴海がしょぼんと肩を落としてシャワールームにとぼとぼと向かったので、ちょっと可哀想だったかな、と花嫁は反省をした。
「でも…。だって恥ずかしいじゃない」
真面目を絵に描いたようなしろがねにとっては、単に和装に猫耳をくっつけることだってものすごく高いハードルなのだ。普通でないこと、をすることがどうしようもなく恥ずかしい。
しろがねはヴィルマの台詞を思い出す。そして葛藤と逡巡。自分の硬い殻とナルミの要望とを量りにかける。どっちを…優先する?
「だって…」
しろがねはガウン姿で立ち尽くす。考えて考えて、考えて         。
はらり、とガウンから袖を落とす。そして鳴海の悪友たちのプレゼントに目を向けた。



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