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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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↓ 成れの果て。
 
スバラシイコト。2周年のお祝い
Thanks! illustrated by 『からくりサーカス覚書。』 ちささん。

オマケSSあり〼。








『お正月には鞠ついて追羽根ついて遊びましょ』




カコカコと軽快な音を立てて色鮮やかなハネが青空を舞う。
その様に勝はのんびりと「お正月っていいよねぇ」なんて思う。
でもハネをつき合う鳴海としろがねにしてみれば、のんびり、なんてしていられない。
息もつかせぬ激戦が繰り広げられている。
10点先取した方の勝ち。
ただいま、鳴海 1-8 しろがね。しろがねの圧勝中。
運動神経も動体視力もいいふたりの対戦。
パワーでは鳴海の方が圧倒的に分があるのに、どうしても鳴海はポイントが取れない。
しろがねの柔軟性、素早さ、器用さが一枚上手で鳴海の渾身の一撃も難なく拾われてしまうのだ。


「これでどうだ!」
勝の目で追えないスピードの鳴海のスマッシュが放たれる、も、しろがねが低い位置で掬う。
「あなたの攻撃は直線的で分かりやすいな」
そう、鳴海の攻撃は威力が強くても素直な性格そのもので、その視線や体の開きでどこに打ち下ろされるのかが打たれる前に分かるのだ。
しろがねにはすっかり見切られている。
しろがねはそのまま鳴海の足元にハネを返した。


「うわ。卑怯だぞ、こんな低いの」
鳴海は動物並みの反射神経でそれを辛うじて返す。
ヒョロヒョロと力なく打ち上がるハネをしろがねが捕らえる。
「はあッ!」
しろがねの身体がしなる。
彼女の羽子板の速度から、強いのが来る!
と読んだ鳴海は自分の羽子板も思い切り振った。
が、そのタイミングを外す、しろがねのフェイント。
中国雑技団仕込のしろがねの動きはとんでもなくトリッキーだ。
鳴海はその緩急つきまくりの動きについていけない。
ハネは空しく、ポトリと鳴海の爪先に落ちた。


「はーい、1-9!しろがねのマッチポイント!」
勝は墨をたっぷりと含ませた筆を、ヌ、と鳴海の眼前に突き出した。
「お、おい。ちょっとは加減してくれよ、勝。…顔が真っ黒になっちまうぜ」
「だめだよ~。しろがねを本気にさせた兄ちゃんが悪いんだからね」
「そうだ!お坊ちゃまの仰るとおりだ!はねつきは負けたら墨でラクガキするのが決まりなのだろう?」
腰に手を当て堂々と言い放つしろがねの鼻の下には立派なカイゼルひげが描かれている。
しろがねは生まれて初めてのはねつき、初めて手にするハネと羽子板。
はねつきの何たるかを理解する前に負けてしまった彼女の顔に、鳴海は面白がってヒゲを描いた。
それが彼女のプライドに触るとは知らずに。


二度と顔にラクガキなどされてたまるか!
本気を出したしろがねには「遊び」の文字はない。
これはもはや戦いなのだ。
鳴海は諦めて顔を勝の好きにさせた。
ピト、と冷たい筆先が触れるや否や眉を繋げられた感触。
「敗者はラクガキされた顔のまま帯一で買い物する罰ゲームもあるからな!」
「何だよ、それ!そんな後付けは……うわ、いきなり始めんな!」
再び始まる、ハネの応酬。


「のどかだねぇ。お正月っていいねぇ」
「ちっとものどかじゃねぇッ!」



End



******
この後、鳴海は勝のお供をつれてコンビニに買い物に行かされました。きっちり笑いを取れたらしいです(失笑とも言う)。
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