『あなたの鼓動が』

強奪品　その２。
Thanks! illustrated by ちささん。

オマケSSあり〼。

『ひとつにとける』




至上の幸福が温もりとなってちっぽけな私を包み込む。
至高の慈愛に余す処なく浸る私に届く、あなたが確かに生きている証。
あなたの胸にとまり、私は目蓋をおろす。


ねえ？
私が今、どれだけ幸せか、あなたに分かる？
あなたの中を駆け巡る生命の音を聴き、それに自分の律動を重ね合わせることができるくらいに寄り添うことを許された私が、あなたに抱き締められる度にこぼれそうになる涙を懸命に堪えているなんて。
莫迦みたいでしょう？


でもね、あなたを愛すれば愛するほど、私は莫迦で愚かな女になる。
仕方がないの、止められないの。
幸せすぎると怖くなるものだ、なんてあなたに愛されるまで知らなかった。
幸せすぎると泣きたくなるのだと、こうしてあなたとひとつにとけていると実感できる。
愚かな私があなたの大きな愛に報いることができているのかと不安にもなるけれど、世界で一番あなたを愛しているのは絶対に私だという自信はあるから。


ああ、だから。
決して離さないで。
ずっと抱き締めていて。
もう、何処にも行かないで。
この幸せを取りあげられたら、私は屹度壊れてしまう。
あなたが私だけのあなたでいてくれたら、私は他に何も望まないの。



end