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『からくりサーカス』鳴しろSS置き場です。
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幻の抱擁





『真夜中のサーカス』の首魁・悪魔・諸悪の根源・フランシーヌ人形。
憎むべき存在。破壊すべき存在。
不幸な境遇に堕とされても聖女であった、白銀の愛した女・フランシーヌ。
愛すべき存在。守るべき存在。
そのふたつの魂を内包するかもしれない『しろがね』・エレオノール。


(オレはどうしたらいい?)


鳴海の中の『しろがね』の魂はフランシーヌ人形を憎悪する。
今すぐにでも破壊したくて堪らない。
彼の体験した絶望が身体の内から憎悪の焔を噴き上げる。
責任を取らせてやる、抑えきれない修羅の心が牙を打ち鳴らす。


鳴海の中の白銀の記憶はフランシーヌを深く愛す。
今すぐにでも愛を交わしたい衝動に駆られる。
もう二度とフランシーヌの魂には辛く寂しい思いをさせたくはない。
今度こそは自分の手で彼女を幸せにしてやりたいと強く願う。


相反するふたつの動機。相容れないふたつの責任。


(オレはどうしたらいい?)


腕の中のエレオノールは温かい。人形の冷たさはない。
ただ無言で抱き締める。
首に当てた手にほんの少しの力を込めればエレオノールは死ぬ。
首に当てた手をほんの少し滑らせればエレオノールの唇に触れられる。


(オレはどうしたらいい?)


彼女を幸せにしてやりたい、笑わせてあげたいと望む心は誰のものなのか?
白銀のものだけ、と言い切れるのか?
鳴海は暗闇に蠢く不可視の運命の機械を睨みつけた。


「いつか……殺す」
「いいわ、それでも」


「殺す」と呟く愛する男の胸は、言葉とは裏腹に温かくて
エレオノールはその抱擁に酔い、うっとりと目蓋を下ろした。



End
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