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義務教育を終えてない方はご遠慮ください。
蛍火・更にオマケ
火の無い所に煙は立たぬ。
「本当に何でもないんだって!」
「火のないところに煙は立たないって言うでしょう?」
「だから、元気のねぇ阿紫花の話し相手になっていただけだって!」
「だったら何も抱き合ったり、キスしたりすることなんてないじゃないの!」
トイレに立ったままなかなか帰って来ない鳴海と、それを迎えに行ったしろがねがやっと戻ってきたと思ったら、何やら緊迫したケンカをしながら、勝たちが団欒する部屋の前をトタトタドカドカと通過していった。
見るからに鳴海に分がなさそうなケンカ。
怒り心頭なしろがねを必死に宥めようとする鳴海の図。
「何?ケンカしているの?あのふたり」
煎餅を齧りながら百合が言う。
「珍しいねぇ。ケンカなんてするんだァ、あのふたりでも」
のんびりと茶をすすりながられんげが言う。
「結構、痴話喧嘩、ってのは見たことあるけど。こんな言い合いは初めてだな、オレは」
畳の上に寝っ転がってマンガを読んでいた平馬が言う。
「大丈夫なの?放っておいて」
ふたりが通過した方角を首を伸ばして眺めていた菊が言う。
「すぐに仲直りするよ。簡単に」
勝は慣れたように、平馬と同じくマンガを手に寝っ転がった姿勢のまま言う。
「兄ちゃんはどんなに怒っているしろがねでも宥めることができる『奥の手』を持ってるから」
「へえ、そんな技持ってるんだァ、鳴海サン」
「喧嘩するほど仲がいい、それを地で言っている訳ね」
「そーそー」
平馬と自分の間に山積みにしたコミックスの次の巻に手を伸ばしながら勝は返事をした。
茶の間の話題が鳴海としろがねの痴話喧嘩から他のことに移ってしばらくした頃、勝が平馬にぼそりと言う。
「ねぇ今夜さ、へーまの部屋で寝てもいいかな?」
「別にかまわねぇけど狭いぜ?オレ、おふくろに言われて客間に敷いたぞ、おまえの布団も入れて三組」
「うん、そうだけどさ。たまにはいいじゃない?」
「たまには、も何も、サーカスで年中一緒に寝てんじゃん」
「いーからいーから」
勝は平馬の『変なヤツ』という視線を笑って流す。
「まァ、いいけど」
平馬はそう答えて視線をマンガの続きに戻した。
勝はそれを確認してからコミックスの影で溜め息をついた。
だってさ。
僕が子供だと思って遠慮ないんだもん、あのふたり。
気付かれてないつもりなんだろうけど、あんなんじゃ起きちゃうよ。
一晩中、隣の布団で無邪気に寝たフリするのって大変なんだから。
いまだ、失恋から立ち直れていない、思春期少年の悩み事。
End
postscript まっすぐ成長したまえよ、勝。頑張れー!
ということで、鳴海の『奥の手』(それが何かは皆さん、察してはおられるかとは思いますが)を触りを覗きたい方、いらっしゃいますか?